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□幸せな日
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ある日の午後の昼下がりの出来事だった。

「ねぇ、僚」
「ん〜」

僚はいつものようにいかがわしい雑誌を手に返事をした。
香はいつものことだと気にせず、話を続けた。

「僚って、子供好きじゃないよね?」
「だっけ〜…ぅほ、もっこり美人ちゃん!く〜、あとちょっと…このブラが邪魔なんだよな〜」
「僚!」

話を聞く気がない僚に香は怒鳴った。
それでようやく僚はちらりと香を見た。

「一体なんだよ、大声出して」
「そういう発言を私の前でしないで欲しいの、胎教に悪いでしょ」
「‥たいきょう?誰の?」
「私の」
「へ〜…って、まさか…」

僚はその言葉にようやく雑誌から顔を上げた。
これまでにないくらい驚いている。
だが、暫くすると何か思い当たることがあるのか頷き始めた。
そして、香をおもむろに抱き締めた。
それに香は驚きながらも、受け入れた。

「病院には?」
「行ったわ、今2ヶ月ですって」
「そうか‥よくやった」
「本当に?」
「ああ」

香はその言葉を聞くと、涙を流し始めた。
そんな香にわけがわからない僚は慌てた。

「どうしたんだよ」
「うれしいのよ。こんな職業だから、子供がいらないって言われたらどうしようかと思ってたから」
「すまない、一人で苦しませて」
「ううん、もういいの」
「これから槇村の墓に行くか」
「うん、驚くでしょうね」
「ああ、あの世から俺を殺しに来るかもしれんな」
「そしたら兄貴に直接報告出来るわね」
「辞めてくれ、俺はまだ命が惜しい…」

くすくすと笑う香はまた一段と綺麗になっていた。


End.


シティーハンターで僚香でした。



注)僚という字は本当はけもの辺にリョウです。
話の都合上別の漢字を当てました。

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