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□風邪引きの聖なる日
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今日は俗にバレンタインと呼ばれる日だ。
世の女性はその日を気にし、早めに仕事を切り上げる。
それはアキラも例外ではなかった。
仕事を定時で帰り、愛しい人の家へと向かう。
服装は仕事帰りなので、スーツのまま。
着替えて行く余裕はあったが、明日も仕事の彼においたをせぬよう休ませるためだった。
玄関のチャイムを押し、奥から聞こえてくる何時もと違う足音に少し違和感を覚えながら待っていた。
ようやく開いた戸の先には、いつも出迎えてくれる人ではなく愛しき人だった。
「伊沢、仕事は?」
首を傾げながら聞くと、愛しき人は平然と言った。
「休んだ」
「休んだって、体調でも悪いのか?」
「大丈夫だ。とにかく中に入れ、あかり達も待っている」
その言葉に従ったアキラは言われるままに、部屋に通された。
部屋には、あかり達がおりアキラは用意して置いたチョコを渡した。
「ありがとう」
と、お礼をいうあかり達の姿からはほんの少し小学生の面影が見え隠れしていた。
「どういたしまして。ところで、壱成君は?」
台所の方を見ても、姿がない。