Other
□初詣
1ページ/3ページ
どうして日本人は皆、元旦に初詣へと行くのだろうか。
こうして来ている辺り自分も日本人なんだろうけど。
俺は軽くため息をついた。
その日の朝はとても幸せだった。
初詣に行くといえば、母に着物を着せられ愛しき人の迎えを待った。
迎えに来た伊沢は、着物姿に目を細め褒めてくれた。
そこへすかさず兄が邪魔しに来たのは、余談だが‥。
今年は伊沢の車で、少し遠い神社まで足を延ばした。
そこは願いごとが叶う神社として有名なのだ。
それがいけなかったのだろうか。
-始めてくる神社に、馴れない着物、大勢の人々-
全てが悪かったのかもしれない。
考えれば考える程悲しくなってきて、横を流れる人の波が羨ましかった。
そもそも伊沢とはぐれる原因となったのはその人の多さなのだけど。
携帯に連絡しようにも、こんな日に限って忘れてきている。
今頃自室の机の上だろう。
伊沢に会いたくて、なのに独りでいる自分が惨めになってきて悲しくなってくる。
流石にこの年で人前で泣くわけにいかず、泣きそうなのを我慢していた。