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□月見草
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あるところに伊沢という男がいた。
伊沢は毎日、馬を引き近隣の村まで荷を運ぶことで日々の生計をたてていた。
その際に、馬をなだめる為の歌をうたう。
道中に、綺麗な花が咲いている。
そこで一休みをして、それからまた歩き始めるのが最近の伊沢の日課だった。
ある日の晩のことだった。
旅の途中で、一晩泊めてほしいという女が訪ねて来たのだ。
伊沢は一人暮しなので満足なおもてなしも出来ないからと断わろうとしたが、女はそれでも良いからと言って泊めることになった。
男が料理をしようすると女はそれを制し、自ら作った。
料理は旨く、それを素直に告げると女は嬉しそうに微笑んだ。
食後、女が後片付けをしている間に伊沢はつい考えてしまった。
こんな風な女との幸せを。
伊沢は数年前に流行り病で家族を失っていた。
それ以来、こんな風に考えたことはなかった。
だから、このような考えに自身でも驚いていた。
そんな考えを見透かしたように、女はかしこまり結婚を申し込んできたのだ。
伊沢は驚き、こんな見ず知らずの男と結婚してもよいのかと尋ねた。
女は頷き、伊沢と女は夫婦となった。
女の名は晶といった。