キリリク
□遠き想いに
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うららかな昼下がり。私は書斎に籠もる師匠に、ご飯を食べてもらい食器を下げに台所にいた。
「あの、マスタングさん…」
「やぁ、リザ、ご馳走様。美味しかったよ」
師匠の娘リザに出会った。彼女は相変わらず可愛らしい、父親に似なくて良かった。と、ほほくそ笑んでいた。
「はい‥‥あの、マスタングさんは‥経験、ありますか?」
‥はい?今ナニを言いました?
確か経験とか、経験とか。一応もなにも若い男性の私には経験=アレしか浮かばない。黙る私に対し、リザは続けた。
「その、この間学校で人に言われたんです。その、遅いって‥」
最近の子は随分ませているらしい。
「それは、だな‥」
そんな期待したような目で見られても困る。答えなければならないじゃないか。
「‥ひと‥そう、人それぞれだから急ぐことはない」
「マスタングさんは幾つで、だったんですか?」
「じゅぅ‥いや、まだだよ」
ここは正直に答えない方が良い。正直に言えば、根ほり葉ほり聞かれる。