ハガレン1
□それは毎年やってくる
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鋼の錬金術師T
【それは毎年やってくる】
リザにとってその日は、何があっても忘れてはならない大事な日だった
ロイはホムンクルスとの戦いで、負傷し現在は同じく負傷したハボックと共に入院している。
その戦いで、ロイは一人の部下を置いてゆく決断をした。
その日の晩のことだった。
ロイはすでに眠りにつき、同室のハボックも眠っている。
だが、ただ一人リザだけがロイの護衛の為に起きていた。
リザはロイの護衛は自分の仕事だといい誰にも譲ろうとしない。
だから周りもそれを受け入れ、さりげなくサポートしている。
その日の晩は、リザが一人護衛にあたっていた。
リザは周囲に誰もいないのを確認した後に、ロイに近づいた。
「大佐」
ロイとハボックが起きないように、小声でロイに話しかけた。
「大佐、今日でしたね。お誕生日」
リザはそっと、ロイに顔を近づけ囁いた。
「おめでとうございます。もう30歳になられるのですね」
そこで、リザは言葉を切り一呼吸置いてから続けた。
「たとえ貴方が何歳になろうと、ついて行きます。どこまでも、貴方と共に」
そして、リザはロイの唇とそっと重ね合わせた。
暫くして顔を上げると、リザは起こさぬようにロイの護衛に戻った。
そこにはただロイの為だけに生きる女は居ず、ロイと共に茨の道を生きようとする部下が居るだけだった。
ただその時に、ロイのほうが赤くなっていたのはリザの与り知らぬことだった。
END.