お題
□友情・切ない系で5のお題
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C埋まらない隙間
今日高村さんを見掛けた。
声は掛けれなかった。
高村さんは俺の知らない、綺麗な女性と歩いていた。
胸が痛くなる。
祥が見たら、また高村さんを拒絶するのだろうか。
そしたら俺はまた暫くは女の恰好をして、高村さんのマンションにいるんだろうな。
あとまた女疑惑が持ち上がらないように、天野に程よく手抜きを頼まないといけない。
あんなのはもうまっぴらだ。
気が付くと、高村さんを見失っていた。
高村さんの邪魔をしてはいけない。
口からこぼれでた言葉だった。
その言葉で高村さんのあとを追うのを諦めた。
前を見て歩く元気はなかった。
途中で伊沢に会った。
偶然だった。
伊沢は何も聞かなかった。
俺はそれに甘え、何も言わなかった。
多分、説明を求められても答えられないだろう。
俺が女と知らない伊沢に、どう説明して良いのか解らなかったからだ。
当たり障りのない会話をしたが、それが妙に居心地が良かった。
最後に、じゃあなと別れた。
俺はこれ以上あの人との距離を縮めれず、終わるだろう自分にその夜最後の涙を流した。
けれど、不意に伊沢の顔を思い出したら涙が止まっていた。
End.