ハガレン1

□シンデレラ(前編)
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「やぁ、シンデレラ。今日も綺麗だね」

あの日から何時も、男はリザを待っていた。
男の名はロイと言った。
最初の頃、リザは無視していた。
しかし、何時も話し掛けてくるロイに少しずつだが気にかけるようになった。

「何時もここにおられますけど、貴方にも生活があるのではないですか?」
「いつも仕事を終わらせてから来るから問題ない。それこそ君は休みはいつなんだ」
「何故ですか?」
「デートに誘おうと思ってね」
「・・・人が生きていく上で、家事は終わりのないものです」

リザは顔を曇らせた。

「ならば作ればいい。君にだって休む必要があるのだから」
「そうできたらどんなにいいか・・・」
「ならば、今すぐにでも」

ロイはリザの手を引いて行こうとした。
だが、リザはそれを拒んだ。

「駄目です!投げ出せません。どんな人達であれ、私の家族なんです!」
「彼女らが家族ならば君がそんな表情をすることはない。シンデレラ、君はこんなところにいてはいけないんだよ」
「…私に、余計なことを教えないで下さい!知らなければ、幸せということもあるんです‥」

リザはそう言うと走り出した。
家に着くと、すぐにでもベッドに潜り込み泣きたかった。
だが、そんな理由で彼女らが休むことを許してくれるわけない。
リザは重たい体を引きずるように、淡々と家事をこなしていった。
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