ハガレン1

□紫苑にのせられ(前編)
3ページ/11ページ

そこに幼く可愛いらしい声が聞こえた。
リザは振り返ると、笑顔になりその声の主を招いた。

「おかあさん…、またどこかいくの?」

昼寝から目覚めたばかりで、眠たそうな口調で言った。

「行かないわよ。どうして?」

目線の高さを合わせる為にしゃがみ込むと、優しく笑いながら答えた。

「まえとおなじだから」
「おなじ?」

男の子はコクりと頷いた。

「まえにね、ここにきた時のお母さんと」

目が覚めてきたのか、少しづつ呂律が回り始める。

「そうだったの、どこにも行かないわ。もしどこかに行くとしても、貴方達と一緒よ」

リザは嘘をついた。

男の子は嬉しそうに頷くと、思い出したように叫んだ。

「あ!」
「どうかしたの?」
「お昼寝がおわったら、あそぶ約束をしてたんだ」
「誰と?」
「サムとハヤテ号と!急いで行かないと。じゃあ、いってきます!!」
男の子は兄弟の名と、愛犬の名を言うと走り始めた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ