ハガレン1
□紫苑にのせられ(前編)
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そこに幼く可愛いらしい声が聞こえた。
リザは振り返ると、笑顔になりその声の主を招いた。
「おかあさん…、またどこかいくの?」
昼寝から目覚めたばかりで、眠たそうな口調で言った。
「行かないわよ。どうして?」
目線の高さを合わせる為にしゃがみ込むと、優しく笑いながら答えた。
「まえとおなじだから」
「おなじ?」
男の子はコクりと頷いた。
「まえにね、ここにきた時のお母さんと」
目が覚めてきたのか、少しづつ呂律が回り始める。
「そうだったの、どこにも行かないわ。もしどこかに行くとしても、貴方達と一緒よ」
リザは嘘をついた。
男の子は嬉しそうに頷くと、思い出したように叫んだ。
「あ!」
「どうかしたの?」
「お昼寝がおわったら、あそぶ約束をしてたんだ」
「誰と?」
「サムとハヤテ号と!急いで行かないと。じゃあ、いってきます!!」
男の子は兄弟の名と、愛犬の名を言うと走り始めた。