ハガレン1
□星霜-SEISOU-
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綺麗な星空だった。
それはこの私達には不釣り合いなほどに。
それでも、あまりにも綺麗だったから君を呼んだ。
「リザ、来てご覧」
「…‥‥あ、はい」
君は目を大きくした。
そして、少しの間が空いてから、呼ばれたのが自分だと認識したようだった。
「どうかしたのか?」
「貴方に名前を呼ばれるなんて思いませんでしたから」
「私が君を名前で、呼んだのか?」
「はい、昔のように」
「そうか‥」
名前で呼んだつもりはなかった。
姓名で呼んだつもりだったのだ。
だから、今度は私が驚いてしまった。
言わないと決めた名を、無意識だろうが呼んでしまったことを。
「君といると安らげるからな。だから、つい無意識に呼んでしまうのだよ」
「そう言っていただけると、光栄です」
「中尉、今宵は星が綺麗だな」
「はい」
あえて『中尉』を強調し、自分を戒めた。
「あの、大佐、先程は‥」
「すまない…幸せはいらないと決めたのにな」
「いえ、無意識では仕方がありません」
もう名では呼ばない、そう言ったのは私だ。
彼女はそれを承服した。
けれど、共に過ごした思い出がいらないと言われた彼女の思いは聞けないままだった。