ポケモン冒険小説

□三人寄ればなんとやら
1ページ/11ページ


 体に合わないダボダボの派手なジャージに、薄汚れた金髪。オレンジのたれ目。肩にネイビーのショルダーバッグを掛けて、ふらふら歩いている少年が一人。彼の名はツルギ。隣にはフタチマルがへろへろになって歩いている。

 ツルギは今、ジョウト地方に来て二度目の海難事故に遭ってきたばかりだ。アサギシティに向かって泳いでいる途中、メノクラゲに襲われたが、何とか辿りついた。凄まじい生命力だと、事情を知っているなら拍手しても良いくらいだ。もちろん知っている者はいないが。

「ぽけ…ポケモンセンターで、これ、僕ごと回復、してくれないのかな…」

 ひいひい言いながら、フタチマルに冗談を言っている。フタチマルも頷くが、肝心のポケモンセンターが見当たらない。街のシンボルである灯台は見えるが、どうでも良いことに思えた。

 喉が痛くて、水が飲みたい。日差しは六月にしては随分鋭かったが、その太陽も暮れそうだ。

 歩いている内に、街の郊外まで来てしまった。ポケモンセンターは途中に無かったし、再び街に戻らねばならない。

「地獄だ…この世は地獄なんだぁ」

 顔を両手で覆って崩れた。悲劇の主人公ぶっているが、隣でフタチマルがあきれ返っているので、そうは見えない。

 諦めて立ち上がると街の方につま先を向けた。一歩歩き出した途端、地面が少し揺れた。初めは小さな地震だったが、段々強くなっていくのが、地震に慣れていないツルギでもわかった。

「うわわわ!揺れてるって!フタチマル〜!」

 実際は対して大きな地震でもなかったのだが、ツルギは大パニックだ。フタチマルも慌ててはいるが、揺れが収まるとすぐに落ち着きを取り戻した。割と近くからはしゃいだ声が聞こえる。フタチマルが茂みから覗いてみると、人が三人と、その周りにヨマワル、アーケン、ゲンガー、ヨーギラスがいた。先ほどの地震は、ヨーギラスの技だったらしい。

 フタチマルはツルギに手招きをした。大人しくフタチマルと同じようにした。フタチマルは今の地震がポケモンの技だという事を証明したかっただけなのだが、ツルギの視線は別の所を捉えた。

「うっわぁ、あの女の人超かわいい…いや、美人系?」

 背の高い赤毛の少女――カルミアに釘付けだ。声を上げて手を叩き、ジャンプしながら喜んでいる。ハイヒールを履いたまま、よく動けるものだ。

「すごいです、ミカゲさん!これでミカンさんも一撃ですね!」

 一緒にいる小さな紫の髪の少女、ミカゲと呼ばれた少女に抱きついている。

「ジムリーダーに簡単に勝てるわけないだろ!…でも、まぁ、そろそろ、ジム戦、行ってみたり…できると…」

 ――あ〜、こっち見ないかなぁ、かわいいなぁ。

 ツルギはカルミアを望んだが、実際目があったのは、ゲンガーとだった。赤く光る眼で睨みつけられると、身が竦んでしまう。ゲンガーの視線を追ったミカゲとも視線が合った。

「誰だ?そこの…フタチマルと金髪」

「あ、はい!」

 フタチマルを先に呼ばれたことは不服だったが、パッと立ち上がって返事をした。

「はわわ、どちら様でしょう?覗き見ですか?変態ですか?まさかストーカー!?そんな!私、付きまとわれるより付きまとう方が好きです!」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ