ポケモン冒険小説
□カルミアの目的
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カルミアは、あのタキシードとレインコートを探していた。ジムトレーナーに負け、外に放り出されたときに、色んな荷物を落としてしまったのだ。中には、大切な物もいくつか。唯一話しかけてきた人物が拾ってくれていることを願うが、望みは薄い。
「はてさて、一体どこにいるのやら」
強めの陽ざしを浴びつつ、いろんな物を目に映す。すると街が異なって見えた。露店で売られる果物の香りと混じる潮の匂い。威勢の良い商売人の声と船の船員たちの歌。真っ白い客船と蒼い空と白い雲と碧い海。何もかもがカルミアの初めてで、胸が高鳴った。
「ひゃはっきれいだね。これがジョウト地方かぁ。でも、もっときれいなものがあるよ」
カルミアは自分のポケモン達の目を順に見てから、
「旅の目的を言っていなかったような気がするね。言わなきゃだね」
彼女のヤドン以外のポケモンは非常に驚いた。この旅に目的があったことに。このトレーナーに何かの計画があったことに。
「私はね、ビレッジブリッジ生まれビレッジブリッジ育ちの典型的なビレッジブリッジっ子なんだよ。あそこは旅人達の通り道。いろんな人がいろんな話を置いて出たり入ったり。面白い場所だったなぁ。ねぇヤドさん」
ヤドンはそれが義務でもあるかのように、また欠伸をした。
「でも、旅人ばかりが面白いんじゃない。橋の人もみんな面白い人たちだよ。レイゾウさんとかソンさんとか、音楽家の人がいた。私はその人たちに教わったから、歌も笛もギターも、ボイスパーカッションもできるんだ。すごい?」
自分たちのトレーナーの意外な特技にポケモンたちは驚いたが、まともに物事を説明できる能力がちゃんと備わっていることにも驚いた。
「でね、なんかね、ホウエン地方から来たっていう人がね、教えてくれたんだ」
カルミアのいつものニヤニヤした表情が変わり、声が急に官能的になった。うっとりと目を細める。
「カイオーガっていうポケモンのこと」
長い独り言が始まった。