ポケモン冒険小説
□変人の話
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てってって、と独特のリズムで歩く少女が一人。赤毛が特徴的なピンク色の目をした少女。
スキップのように見えるそれは、人を避けるときダンスにも見え、笑顔を、いや、にやける顔を抑えようともしない。
彼女の名前はカルミア。遠くイッシュ地方からはるばるジョウト地方までやってきた、ベテランには程遠く、新米に程近いポケモントレーナーだ。
「ヤドさん、見てよ!見てる?あれが灯台だよ。なんかガイドブックによると、天辺でデンリュウがピカピカやってんだって」
両手で抱えたヤドンは欠伸で返した。カルミアの肩にはアーケンが、頭上にはヨマワルが、足元にはブビィが、各々の小さな体を彼女にすり寄せ、不安そうに周囲を見渡していた。
カルミアたちは、今日、豪華客船サントアンヌ号の二等客室に乗ってアサギシティにやってきたのだ。ポケモンたちが不安がるのも無理はない。彼らは知っているのだ。自分たちのトレーナーが、恐ろしく無計画な人間であることを。そしてもう一つ、確信していることがある。
「ひゃっは、どうする?ねぇどうしちゃう?ジム行っちゃう?アサギジムにレッツ挑戦しちゃう?行っちゃう?聞いてるんだよう、みんなぁ。ヤドさんは?ヤドさんバトルしちゃう?勝てるかも?マジでか。溢れだしそうな自信だね。そうだね、行っちゃうか!」
この赤毛の少女は、とんでもなく変わり者であるということだ。