ポケモン冒険小説

□天才の話
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 タンバシティから出た遠洋漁業の船の船員の一人が、気分良く家族の写真を見ながら、船べりに腰かけていると、ばしゃり、と明らかに自然の波の音ではない音を耳にした。もう1か月も海の上だ。船員は比較的若い漁師であったが、すぐに写真を胸ポケットにしまい、立ち上がった。音はすぐ近くで鳴った。何か凶暴なポケモンでもいたら大変だ。すぐに船長に知らせようとした。その瞬間である。何者かが船の上に登ってこようとしているらしい。がたん、と一音。船員が真っ青な顔をしていると、音に気付いた船長も慌ててやってきた。

「せ、船長」

「慌てるな、ポケモンを出せ。登ってくるってことは手足のある水ポケモンだ」

 船長の男は堂々と直に対面するであろう水ポケモンに備えた。

 ――何だ?ゴルダックか?野生のカメックスでは無さそうだ。いや、ドククラゲだって触手を使えば登ってこれるが、その音じゃない。一体何が…

 すると間もなく、フタチマルが船縁から顔を出した。決死の形相をしているが、敵意は感じられない。

「ふ、フタチマル?イッシュ地方のポケモンじゃないですか」

 フタチマルは何かを船の上に引き上げようとしているらしい。片腕で何かを持ちながら、船の中に入った。船長がその片腕の先を見る。

「人じゃねぇか!おい手伝え!引き上げるぞ!」

 黄色い髪の少年が二人の男に抱えられ、船の上に転がされた。それを見て安堵したのだろうか、フタチマルはその場に倒れて眠ってしまった。

「一体何なんだよ…」

 若い漁師が呟いた。
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