Book―short
□君の闇、
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「殴ら、ないでえっ! 嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌あああっ!!」
アジトに響いた、声。
それに続いて、ガタンッと何かが倒れた様な音がする。
―――また、か。
薬箱を持ち、カノの部屋に走る。
こういう事は、時々あるのだ。
……時々、と言うには少々多過ぎるかもしれないが。
広くは無いアジトなので、すぐに部屋に着く。
バタン、と扉を開ければ、髪を掻き毟り、肌に爪を立てて傷を付けようとするカノがいた。
「殴らないで、殺さないで、行かないで、嫌だ、嫌だ、嫌だよぉ……っ!!!」
言葉を発する間にも、爪は肌に食い込んでいく。
「カノ、もう止めて」
そう言うも彼には聞こえていないらしく、近付いた俺を突き飛ばして来る。
ついには殴ろうとして来て、近付いてくるカノの小さな手には、剃刀を持っていた。
飛んでくる拳を止めて握ったカノの左手首に走る傷跡はまた増えていて、思わず顔を顰める。
ひぐひぐ、と嗚咽を漏らして、何これ構わず暴れる。
「カノ、カノ。落ちつくっす」
涙で、血で、ぐちゃぐちゃになった顔を覗き込む。
欺く事もままならない様で、おどおどとしてしまった。
いつもよりも傷が酷いし、欺く事もしていない。
自らを見せる事を一番嫌う彼だから、欺かない事は無い。
しかし、今はそれをしていない。
能力の暴走、だろう。
「嫌、嫌、嫌、嫌、嫌だよおおっ!」
ああ、何でこんな時に…。
――――――いっそ、俺がその苦しみを。
一応脳内で考えていたこの後を↓
セトがカノの苦しみを自分に、って思う → クロハ登場! → カゲロウデイズで何かする? 的な。
カノ君中心なので続くかもしれません。