ブレイド(無修正版)
□stage-09:復讐
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ブレイド
Stage−\ 〜 復讐
東方は、さっき襲われたであろう人間を見下ろしていた。
それは、無残にも喉を食いちぎられ、そこから流れ出るはずの血は残ってはいなかった。
「東方さん……あれ!」
「っ…」
「来たみたいだね…お祈りは終った?」
闇の中から、長い黒髪の男が姿を現した。おそらく、あのときのライダースーツの男だ。
その証拠に、顔の真中に走る罅状の傷があった。
「ふざけるな……」
「ふぅん…、エラソーにさ…混血が…。」
「!?」
東方は、動揺した。
自分が混血だということは、他のヴァンパイアには知られていないと思っていたからだ。
「知らないと思ったの?あまいよ。キミ、能力値低過ぎ。わからないほうがどうかしてると思うけど?人間なんかの血が混じってるから、何もかも半端なんだよ…俺は伊武深司。お前、東方だろ?知ってるよ。ヴァンパイアスレイヤーなんて、お前くらいしかいないんだから……」
「……」
「さ、殺される覚悟はできてるんだよね、半端モノ……俺の顔に、こんな傷を残したんだから…」
伊武は、東方に襲いかかった。
東方は、伊武の攻撃を避けるのが精一杯のようだ。
「避けるなよ…その分苦しむよ?ま、ラクに死なせる気なんかないけどさ…」
東方は剣で攻撃を防いでいるが、伊武の攻撃は全て武器などつかわれていないというのに、時々鈍い音を立てて剣が軋んだ。
それ意外は、鋭利なツメが絶え間なく東方を狙い続ける。
「クソッ…!」
東方は、大きく剣を振りかぶった。
「無駄……」
「ぅっ……!」
剣を上げた瞬間に間合いを詰められ、鳩尾を殴られる。
息が詰まり、声が出なかった。
伊武はそれを無表情で見下ろしていた。
「イイ眺め……」
「っ!だぁぁっ!」
倒れた東方に近づこうとした伊武に、室町が斬りかかる。
「ウザイんだよなァ…」
「なっ…うわあっ!」
「…室・・町…っ!!」
室町は、伊武の眼力でフェンスの向こうまで飛ばされ、壁にぶつけられた。
そのまま地面に落下する。
「室町!!」
「他人の心配してていいの?」
「っ……ぐぁぁあっ!!」
立ち上がろうとしていた東方の鳩尾をまた蹴り込んだ。
苦痛に呻きながら、東方はなおも立ち上がろうとする。
「そう…そうじゃなきゃ楽しくないよ……立てよ。苦しみ喘ぎながら命乞いしてよ……」
「っ…!死んでもするかよ……」
「へぇ…口だけは達者だね…」
また、伊武の攻撃が始まる。
東方は、苦しそうに呼吸をしながら、その攻撃をかわしていた。
伊武は相変わらず無表情だ。
「どうしたの?早く攻撃してきなよ…俺ばっか攻めてたんじゃ、面白くないでしょ?」
伊武は、東方を壁際に追い詰める。
「つっ!」
伊武の爪が、東方の頬に当てられた。
「痛かったなァ…あの時は……」
宛がわれた爪は、そのまま、東方の頬をえぐるように傷つけた。
「うわぁあぁぁああっ!!」
「イイ気味…」
東方は、その状況で伊武を蹴ろうとしたが、その足も簡単に止められてしまった。
「生きていられると思わないほうがいいよ……」
「っ…!」
東方の足を押さえた伊武の手に力がこもる。爪が膝に食い込み、傷つけた。
伊武は、次はどうしてやろうかと考えているようだ。
「イイざまだな、東方。」
フェンスの向こうから声がして、東方は視線だけそっちに向けた。
そこにいたのは、ショートヘア−の少年だった。少年は、何かを担いでいる…
「南っ!!」
「コイツもいねえと面白くねえだろ?なぁ、東方よぉ……」
「っ…!」
「ありがと、アキラ…」
「どういたしまして。」
神尾アキラは、担いでいた南を足元に落とした。
南が、小さく呻き声をもらす。
「貴様ぁっ!」
「まだ何もしてないぜ?ショーはこれからさ…お前が、俺の深司にしたことをコイツにもしてやるよ……」
「やめろ……」
「やめねえよ。どうせなら、引き裂いてバラバラにしてやりてぇくらいだぜ…俺の宝物に……でけぇ傷のこしてくれやがったんだからなぁっ!!!」
神尾の鋭い爪が、南に向かって振り下ろされる。
「やめろぉぉ!!」
=ザシュッ…
血肉を引き裂く音がした。南のシャツが鮮血で紅く染まっていく。
しかし、南自身は無傷だった。
振り下ろされる寸でのところで、室町が南をかばって突き飛ばしたのだった。
そのかわりに、自分がケガを負うはめになったのだが…
衝撃で、眠りの術から解けた南は、瞬間、驚愕した。
「室町!」
「俺は大丈夫……南さん、早く……逃げ………」
「そんなことさせねえよ…」
神尾が、室町を高々と蹴り上げた。
その蹴りには、室町よりも小柄である彼からは想像もつかない力があった。室町は、簡単に蹴り飛ばされてしまった。
「室町!」
「あーあ…もう終っちまったよ……」
「え……」
神尾は、残念そうに室町を見下ろしていた。
南は室町に駆け寄る。
「オイ、室町!目ェ開けろよ!」
脱力した室町の腕を掴む。体温が感じられない。
「室町!」
「……・み、な………み…さん……。俺、死んでま…せん…………サイボーグ…ですから……」
「室町……」
室町の腕は、破れた皮膚から放電しているのが見えた。
無表情のまま、室町は南に告げる。
「逃げてください……早く………」
「わかった。」
南は、立ちあがって走り出した。
「逃がさねえって言ってんだろ」
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