ブレイド(無修正版)

□stage-05:傷
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ブレイド
 Stage−X 〜 傷

 男は、南の首をつかんだまま続けた。

「ま、いいけど……そのうちホントに俺がいただくからね。サーヴァントにはしないとするよ。口の聞き方がなってないしね…、お前なんかサーヴァントにしてもウザイだけだ。血だけいただいたら終わり。カラカラに干乾びるまで飲み干してあげるよ……」
「っ…!」
 「南さん!!」

南を心配した室町がかけ付けた。
男は、不機嫌そうに室町をみたが、その表情はヘルメットの下だ…。

「室町…!」
「南っていうんだ?ふーん……。そこの色の黒いヤツさぁ、南は今俺と話してんの。邪魔しないでくれる?」
 「下がってろ、南…」
「東方…」
「…へぇー…アンタも来てたんだ?更に邪魔だな…」

東方は、あの漆黒のコートに、この男と同じようにヘルメットを着けていた。
男は、突然現れたヴァンパイアスレイヤー(東方)を見るなり、更に機嫌を悪くしたようだ。

「…まあいいや…。南、そういうことだから、忘れないでよ?
 ヴァンパイアスレイヤー…、かかってきなよ。俺を殺したいんでしょ?」
「…」

東方は、無言で剣を振り下ろした。
しかしそれは、男にかすり傷一つつけることなく通路の壁を貫いた。

「ちっ…!」
「どこ見てんの?」

いつのまにか、男は東方の背後にいた。東方は素早く剣を抜き、また、斬りかかる。
しかし、それも当ることは無かった。

「遅いよ。そんなんじゃ、すぐにやられちゃうね…こんな風に…。」

そう言うと、男は一瞬で東方に近づき、鳩尾を蹴り込んだ。

「ぐぁっ!」
「東方!!」
 「ほらね?弱いくせに強がるなっての……」
「よそ見しているヒマがあるのか…?」
「なに…」

男は、すぐに振り返った。背後には、室町が剣を構えて走ってきていた。

「…忘れてたよ…」
「っりゃあっ…!」

室町の攻撃も簡単にかわし、男は平然としていた。

「ツメが甘いな…」

その一瞬で繰出された東方の剣戟が、その男のヘルメットを傷つけた。
ひび割れた個所から、日の光がさし込む。

「あ゛ぁぁぁぁああああっ!!!ぅぐっ…っが・・はぁっ!!き……キサマぁぁああっ!!」

ゼイゼイ息を切らせながら、男は声を絞り出した。
これ以上太陽光が漏れないよう、ひび割れた個所を押さえている。

「移動速度は速いらしいが、お前は移動の際にスキが生じるらしいな…」
「くそぉっ……!顔にっ……傷を残しやがって………生かしちゃおけないよなぁ…
覚えてろよ、ヴァンパイアスレイヤー!!いたぶり尽して殺してやる!!」

そう叫ぶと、男は消えていった。南は一気に脱力し、崩れ落ちた。

「大丈夫か?」
「あぁ、なんとか…」
「すまない…昼間まで奴等が行動するとは思わなくてな…」
「いいって、こうして無事だったんだし…」
「…お前は、優しすぎる…」
「…?」

東方は、そう言って南を助け起こした。

「それ、どう言うこと?」
「…そのままの意味だ…」
「だってさ……ま、いいや。それより、お前大丈夫なのか?」
「なんともない。」
「さっき、メッチャ苦しそうだったからな…心配したんだ。」
「…それはこっちのセリフだ。何度も同じヤツに襲われやがって…」
「ゴメン…」

南は、申し訳なさそうに頭を下げた。

「…プッ…ククク……」
「…?」
「いいんだ、気にするな。別に怒ってるわけじゃない。」
「は?なんだよそれ……」

地下通路に入りながら、東方は南を見て笑った。

「面白いやつだな…」
「何が!?何もしてないのに面白いって、結構傷つくんだけど!?」
「悪ィ。でも、飽きないんだ…お前といると……」
「…そりゃどうも…」

笑いながら言う東方に、南は少し怪訝な顔で言った。
 室町が二人の前に出て、扉のロックを解除する。南は、一直線に走って行き、ソファに倒れ込んだ。
室町は、お茶をいれてくると言って席を外した。

「つかれた…あれ、反則だろ……」
「だな…」

二人とも、本気で悩んでいた。このままだと、南は昼間も落ち着いて外に出られないのだ。
普通ならそういうこともないのだが、南は亜久津に追われているため、この状況で外に出ることはできない。
ソファに突っ伏したまま、南は悩み込んでいた。
親には『1週間』と告げてあるのだが…本当に1週間で家に帰れるのだろうか……

「安心しろ…」
「…?」
「なんとかして見せるさ…」
「うん…でもさ、アイツあんなに強かったのに…亜久津は、もっと強いんだろ…?」
「あぁ。だけど、俺がもっと強くなればいい…」
「…無茶言うなよ…」
「無茶じゃない。できないことは無いんだ…俺は、無理はしない…」
「…」
「だから、安心しろ…」
「…ありがとう…」

南は、東方に満面の笑顔を見せて言った。
東方も、それにできるだけの笑顔で答えた。
ちょうど、室町が紅茶をいれてきた…。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 男は、顔の傷を手で覆い、真っ暗な廊下に荒々しい足音を響かせていた。
それを、彼の手下であるヴァンパイア、日吉が聞きつけた。

「…ずいぶんと荒れてますね…深司さん…。」
「ウルサイ、殺すよ?」
「……」
「ちっ……俺の顔に………。」

深司と呼ばれたこの男、伊武深司は、傷をなぞりながら眉間に皺を寄せる。
しかし、ゆっくりとその視線を上げ、日吉を見た。

「ねぇ、日吉…」
「はい」
「殺し来ててよ。東方を……」
「……」
「持って帰えって…俺の目の前で引き裂けばイイ。」
「は。仰せのままに。」

日吉は、伊武に頭を下げ、そのまま闇に同化していった。伊武はそのあとを見つめ、今度の計画について考えをめぐらせる。

「ザマねえな、深司……」
「亜久津…」

亜久津は、嘲るように笑っている。
伊武はまた眉間に皺を寄せた。

「ウルサイ……」
「怖ぇな…ククッ……」
「余裕だね…気に食わないよ……」

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