ラッキー千石の事件簿

□カルロッタは劇場で
1ページ/3ページ

オペラ座の怪人

 ・四・

 食堂の端に作られたラウンジコーナーが、ゲームの場に選ばれ、まず鳳がソファに腰をおろした。
続いて南が…と、言いたいところだが、南の前に千石が、早足に鳳に近づき、隣に腰掛けた。
そして、南に、隣に来るように促した。
南は、呆れながらも千石の隣に腰掛けた。亜久津はその隣に。
 亜久津は、どうも鳳の芝居がかった好青年ぶりが気にくわなかった。

「隣いい?」
「あぁ?」
「あんたの隣、座っていい?」
「勝手にしろ。」

亜久津の隣に神尾アキラが無理矢理座った。
彼は小柄なため、少し開いたスペースに座ることができたのだった。
神尾は、亜久津に向け、にっこり笑う。
短すぎるくらいのズボンから伸びる足は、無駄な肉のつきすぎないほっそりとしたものだった。
亜久津は何故か神尾ばかり見ている。

「俺に気でもあんの?へへっ…」
「ねぇよ…」
「イイカンジだと思ったんだけどなぁ…」
「ウルセェ。」

亜久津は心底面倒くさそうに答えたが、その反応が、かえって神尾には面白かったようだ。
クスクスと笑いながら、亜久津に小突かれている。

「『ウノ』ですか?おもしろそうだなぁ。」

と、エプロンを外しながら、アルバイトの大学生、森辰徳が近づいてきた。

「一緒にやろうぜ?」

と、神尾。それを聞いた森が、ちらっと、オーナー(伴田)の方を見た。
微笑み、伴田は言った。

「いいですよ森君。一緒に加えてもらいなさい。今日は昼間からいろいろと大変でしたからね。」
「いいんですか、オーナー?」
「えぇ。いいですとも。」
「ありがとうございます!」

子供のように喜ぶ森。
無邪気さと人懐っこさが感じられた。
 森は、ソファにはもう座れないため、背の低い椅子を引っ張ってきてそれに座った。
なぜか視線は南にある。
千石がその視線をたどっていくと、南は、室温が少し高い所為なのか、シャツの胸のところをだらしなくはだけていた。
もちろん。男ばかりだからという安心感もあったのだろうが…

「南ちゃん。セクシィ…」
「はぁっ!?」

千石が、普段通りのふざけた口調で、それとなくシャツを整えるよう仕向けた。
千石の思惑通り、南はシャツのボタンを留める。

―俺以外の前でそんなセクシィなカッコしないでよねぇ。(独占欲)

各自、配られたカードを取りはじめた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ