ラッキー千石の事件簿

□オペラ座館からの招待状
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ラッキー千石の事件簿
オペラ座の怪人


あぁ醜い。なんという醜さだ。
顔だけでなく、この心も。
私の心は、きっとわが身よりも先に地獄に堕ちてしまったにちがいない。
これから人を殺すというのに、なんのためらいも感じないのだから。

第一幕
『オペラ座館からの招待状』

 ・壱・

「起きてくださいよ!千石さん!」

千石清純の左耳から、同居人・室町十次の声が飛び込んで、右耳似突き抜けた。
本当に…
付きぬけた…。

「Z……」
「せ・ん・ご・く・さん!起きてください!もう!部長…じゃなかった(NG)。南さん来てますよ!!」
「ほえぇ…?」

のんびりまったり置きあがった千石の顔に、着替えのシャツとパンツが飛んでくる。

「いつまで寝てるつもりですか!!」
「え?もう連休終わり?もう学校?」←高校生。

寝巻き代わりのTシャツを脱ぎながら、まだまだ寝ぼけ眼の千石が言うと、室町は飽きれたように溜め息をつき、床に転がっていたジーパンを拾って投げつけた。

「あうちっ!」

昨日脱いだと気のままで通しっぱなしのベルトのバックルが、千石のおでこを直撃した。

「いつまで寝ぼけてるんですか!?今日から旅行だって言ってたでしょう!?ほら、あの
 『オペラ座館』とかいうホテルに招待されてたでしょう?」
「あぁそうだった。メンゴ☆で、今何時?」
「8時ですよ。」
「…。はい?」
「8時。」
「……うっそぉっ!?なんでもっと早く起こしてくんないのさ!?」
「起こしましたよ!!千石さんがずっと寝ぼけてるのが…って、もういいからさっさと着替えて下行ってくださいよ!南さん待たせてるんですから!!こんなこともあろうかと荷物は全部俺がまとめて置きました!パンだけでも食べて」
「わかった!パンツ着替えるから出てってv」
「わかってますよ!!ι」

 南健太郎は、千石の家の、玄関の土間で時計とにらめっこしていた。
二階からは、室町の怒声と千石の悲鳴…。

―え…悲鳴…?ι

そして、足音と衝撃音…。

―え…どすん…?ι

「やっぱり…もう少し早く来るべきだったか…ι千石のヤツ…まだ寝てたな…。」

とつぶやいて、、玄関に備え付けられた鏡を覗いた。
今日の為に…っと言って買ったものは特に無いが、いつもよりも少しくらい『オシャレ☆』なつもりだ。
『オペラ座館』での食事は洋食のコースだからと、少ない小遣い必死に溜めて服を買った。
(親はあまり家事を手伝ってくれないし……その分の小遣い入るし…。)
出掛けに、姉が…「千石くんと同じ部屋なんじゃない?vだからさv」なんて言って要らん物渡してくれたし……はぁ……

―でもま、こんな日は怒らないようにしないとな…。

自分に言い聞かせ、南は鏡から目を離した。

 しばらくして、天井から相変わらずドタバタと足音が響く中、室町がいつものクセで困ったように
笑いながら階段を降りてきた。

「ごめんなさい、南さんιあ、お茶でもいれましょうか……」
「いいよ。すぐ出なきゃいけないし…。」

そして更に足音。
千石が、スライディングしながら二人の間に入った。

「ふぅ〜…室町くん。南ちゃんと何話してた〜?」
「別に他愛も無い話ですよ。ったく…独占欲だけは強いんだからこの人は…」
「おまたせ、南ちゃんv」

っと、まったく悪びれもせずに言って二人して外に出た。
南は強制的に引っ張られたと言った方が正しいが…。

「千石さん…ご飯どうします…?」
「あ、食いながらいく。」

既にパンくわえてるよこの人……
「さ、行こっか。」

っと、明るく言い放つ千石に、南が呆れながら、そして視線をそらせながら千石の股間を指差した。

「それ…さっさと閉めろ…。」
「え?」

指差された個所に目をやる千石…。
社会の窓(チャック)が見事に開いている。そのうえ、ダサイ縞パンが覗いているときた…。

「あ…」
「あ、じゃねえだろ。さっさと閉めろバカ!!」
「め、メンゴ…☆」

―バカだ…。コイツ絶対バカだ……。

南は呆れながら先に歩き出した。

「待ってよ南ちゃぁ〜ん!!(涙)」
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