ブレイド(修正版)

□stage-01:夜
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Stage−T 〜 夜


騒がしい夜だ。


日は沈み、月が顔を出そうと活気を失わないこの街は、今夜も多くの人々で溢れている。
夜の街は昼間とは顔を変え、鮮やかな電飾や怪しげな看板が主張し、酔客、客引き、着飾った女たち…行き交う人もまた昼間の人混みとは異なった。

そんな賑やかな街の中で、この通りだけは一際独特のオーラのようなものを醸し出していた。
華やかな大通りから離れた通りには、表とは真逆の、一見気だるげで生気の感じられない人々の群れが行き交っている。
しかしなぜか…その目は、皆一様にギラギラと欲望に輝いているのだ。
まるで、息を殺して草原に身を潜め、今にも目の前の獲物目掛けて飛びかからんとする、飢えた野獣のそれのようでもあった。
そんな住人たちの行き交う此処も、一端の歓楽街らしく、様々な店たちが皆競い会うようにけばけばしいネオンを瞬かせているが、“まとも”な人間を寄せ付けない雰囲気が常に渦巻いている。
それだけ此処の住人たちは、否、通りを覆う空気全てが異様なのだ。
地獄の入り口が、日常の片隅にぽっかりと口を開けて待っているような、うっかり近付こうものなら、そのまま無数の亡者達の手に捕らえられ、引きずり込まれていきそうな、そんな場所だった。

しかし、それ以上に何者も寄せ付けぬ場所が此処にはあった。

この路地裏に、通いなれた酔っ払いでさえも近付きたがらない場所に、それは存在している。
夜の住民の中でも、限られた者だけが近付くことを許される“城”とでも言うべきだろうか。
周辺の通りでは、娼婦なども平然と通りを歩いては露骨な勧誘をしている。
警官の制服を着た者もいるが、彼等はそんな輩に注意すらしないどころか、娼婦の誘いにのっている者もいるほどだ。

彼等は皆『同族』なのだ。

彼等の中では外界のようなルールなど無く、この場所は、所謂無法地帯なのである。
日の光の見えない夜中になれば街に出て活動し始め、日が昇ればまた眠りに付き、太陽が沈む時を待つ。
そして、時々「狩り」に出るのだ。
獲物はどこにでもいるが、狩りは慎重にこなさなければならない。

邪魔者が入る前に、証拠を残さぬように…
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