学校の怪談(無修正版)

□第八章:炎天下の冷笑
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予感はしていた…
ただ、この目が現実を受け入れない…

8章:炎天下の冷笑 〜合宿〜 02

 東方は、視線を感じ振りかえった。合宿の部員達から離れ、木陰から彼に視線を送っている男が1人…。
東方は息を呑んだ。

「忍足…、侑士」
「なんや自分、しばらく会うて無かったらもうフルネームの呼び捨てかいな?えらい淋しいなぁ…」

特徴のある丸い眼鏡をくっと上げながら、忍足はわざとらしく泣真似をして見せた。東方の視線は、凍ってしまったかのように忍足に貼り付いたままだった。
東方にとって、彼は最も出会いたくなかった人物なのだ…。
 そんな東方の気持ちなど、知っていても気にする由も無く、忍足は堂々と東方に近付いてくる。東方は一歩あとずさった所で忍足に腕を掴まれた。

「逃げる気ィか?」
「できれば、お前とは会いたくなかった…」
「ほぉ、俺は会いたかったで?そんでずぅっとお前のこと探してた…」

そして忍足は東方の腕を離すと、元歩いてきた道を引き返す。数歩歩いた所で立ち止まって首だけ東方に向け、ニッと微笑した。

「あの頃には戻れンのかなァ…?」
「戻す気はない。」
「俺かて無いわ。全てはこの合宿中に決める…否、決めなあかん。俺は任務で来てるんや。この意味、お前やったらわかるやろ?」

プレッシャーを感じさせる忍足の視線を真っ向から受けとめ、東方は拳を握った。

「止めて見せる。」
「……さよか…。淋しゅうなるなぁ、東方…」

 忍足は、それきり顔を隠すようにそっぽを向き、すぐに選手たちの中にまぎれていった。
東方は忍足の去ったあともまだ立ちつくし、何かをこらえて歯を食いしばった。振るえる拳に力が入り、痛みさえ感じる。

「東方?」
「?み、南…」
「なに怒ってンだよ?」
「いや、なんでも、あー…ちょっと緊張しちゃってさ、他校の生徒も来てるわけだし。」

東方はなんとか笑ってごまかすが、妙な所で勘の鋭い南には通用しなかったようだった。南はずっと観察するように東方を見上げていたが、諦めたのか、一度軽く息を吐いた。

「東方がそういうなら俺は何も言わないよ。ただ、ちょっと心配だっただけだから。
それはそうと、はやいトコくじ引きに行けよ。」
「そっか……そだな。サンキュ、南。」

「へー。南ちゃんて言うの!」
「せ、千石!」

突如東方の背後からわいて出た千石が、南にくっ付いてあれこれ質問し始める。東方は千石を南から引き剥がした。

「ひっどーい!俺南ちゃんと仲良くしてただけなのにー!」
「仲良くじゃない!あんまりお前みたいにベタベタ人にくっ付いてくヤツ見ると皆が引くんだよ!覚えとけ、このバカ千石!」

東方は千石の頭を小突く。千石は女々しく泣きまねをする。

「更にひどーい!雅美ってば俺をイヂメて楽しい?」
「お前こそ俺をいじめて楽しいかよ…」
「あー、結構楽しいよ?それなりに反応返って来るし。」
「……あっち行け!」
「はいはーい、お邪魔虫はあっち行きますよーだ。んじゃね、南ちゃん☆」

南は突然の千石来襲に驚いて、まだきょとんとしていた。

「ごめんな、アイツああいうヤツだから。」
「う、うん…」
「さて、俺もクジ引いてくるか…」

クジを引いた後、荷物を部屋に置いた俺たちは集合場所(コート)へ行こうとした。
そしたら東方の叫び声が隣りの部屋から聞こえてきた。

「東方の叫び声…」(橘)
「どうかしたのかなぁ?」(赤澤)
「行って見るか」
「うん」

部屋のドアを開け隣りの部屋の前に立ちノックをしようとした…
その時

「なんでお前と同じ部屋なんだよ!」
「えー、しらないよ。先生が決めたんだしー」
「はぁ…なんでこいつと同じ部屋に…」
「なんだよその言い方ー。あっもしかして東方、南ちゃんと一緒にの部屋がよかったとか思ってないよね〜?」
「いっいや、そんなことは…」
「あ〜、やっぱり南ちゃんと同じ部屋がよかったんだ!」
「大声で言うな、このバカ!!」

ポカ!

「いったーい、暴力反対ー!!」
「うるせー!」
「…そっとしておこうかι」
「あぁ、そうだなι」

とりあえず東方たちの部屋から離れ俺たちは集合場所に向かった。

「あ、さっきのクジをの結果出てるよえーと橘は…千石とで俺は丸井だな」
「みんな集まったな、じゃあダブルスペアで並んでくれ」

先生の言葉で全員が動き始める。

「えーと、橘君だよね、俺千石清純よろしく〜」
「あぁ、橘桔平だこちらこそよろしく」
「えーと、俺たちの試合は…4試合目だよ」
「あぁ、そうみたいだ…え?」

試合の順番を書いた紙を見た時テニス部じゃない人の名前が紙に書いてあった。
その名前は…

「なっなんで南と大石の名前が…」
「え、南ちゃんと大石君ってテニス部じゃないの?」
「アイツらはマネージャーとして…」
「あの2人の名前はワシが書いたんだよ」
「りゅ、竜崎コーチ!」
「アイツらは中学の時全国クラスにいたって入学当時から聞いていてね…テニス部に誘ってみたんだが断られてしまってな、というこで今日と今度のシングルスの試合に1回だけでいいからやってみてくれといったら”久しぶりだし1回くらいならいいか”と言ってくれたんだよ。」

だから1試合してもらうことにしたんだと先生は言った。

「確かに勉強になるかもしれませんね」
「あぁ、ブランクがあるらしいが元全国区、どんなプレイを見せてくれるか楽しみだよ」

と先生は言い、試合を見るべくコートの方へ向かった。

「あ、橘ー!こっちこっち」
「赤澤も見にきてたんだな」
「うん、楽しそうだしぬ」

確かにと思いながらコートの方を見た。

「俺たち2人が揃えばどんな相手にも15分もあれば確実に勝てるよな、なぁ手塚」
「あぁ、だが油断せず行こう」
「テニスなんて久しぶりにだなぁ」
「あ、大石君もテニスやってたんだ」
「南君も?」
「うん、ブランクあるし俺弱いけどがんばるよ!」
「うん、俺もがんばるね」
「今から試合を始めます南トゥサーブ」
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