学校の怪談(無修正版)

□第十二章:創造されし運命
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暗い闇夜によく映える
あざ笑うような月が…

十二章:創造されし運命 〜始動〜 〇一

 橘は南に傷の手当てをしてもらい、落ち着いたところで全員の顔を見渡した。頼りなく揺らめく炎に照らされ、全員ほとんど生気のない顔だった。実際、橘も落ち着いているとは言いがたかったが、この状況にしては冷静に戻れた方だった。
 柳生を連れて行かれいてもたってもいられないらしく、仁王はさっきから靴のつま先を毟るようなしぐさをしている。元々怖がりの南はどうやら恐怖に絶えているようで、包帯を巻く手は震えていた。大石はずっと困惑していたが、仕方なくわけを話し、なんとか納得させた。問題は東方だった…。

「組織のこと…黙ってた。」

東方は独り言のようにいい、膝を抱いて座ったままばつの悪そうな顔をした。

「わかってた。」
「橘…」
「話しているとき、どうもお前はその組織のことを知りすぎていると思ってな。なんとなく、予感はしていた。」
 「黙っててもしょうないやろ、なぁ…」

忍足がだらしなく挙手する。

「俺は、組織で活動しとったときのこいつの相棒。安心せぇ…もう、今日辞表出しにいくつもりや。」

ニッと笑い、忍足は前髪をかきあげた。

「それで、組織の狙いは何なんだ?」

橘はそう質問するが、二人ともわからないようだった。目的は知らされたそうなのだが、まったく関係のない任務を任され、だんだんと組織の目的に疑問を抱き始めたのだという。

「わからないか…」
「いや、少しだけなら…。組織は“鍵”を探してる。それがなんなのか検討もつかなかったんだが、今になってわかってきた気がする。鍵っていうのは俗にいう贄みたいなもんなんだ。5人必要だって言ってたから、それがきっと赤澤達なんだ。鍵というからには何か扉みたいなものを開くために必要なんだろうが、それは亜久津たちの封印が解けたことで大体の見当はつくだろう…」
「魔界か…」

忍足がつぶやくと、東方は浅く頷いた。忍足はさらに言葉を続ける。

「魔界と人間界との併合。それが組織の目的。理由はわからんけど、人間界、俺たちには悪影響やわ。」
「それを食い止めなくちゃならないわけだな。」
「簡単に言うけど、そういうもんや。」

橘は頷き、しばしの間考え込んでいたようだが、やがて顔を上げると南と大石を見た。

「南、大石、お前たちはここにいてくれ。」
「あぁ。俺と南くんは何もできないだろうし、ここにいるけど…橘…」
「俺達が行かないと、もっと大変なことになるかもしれない。レベルはまだ1かも知れないが、決着をつけにいくつもりだ。」

橘が立ち上がると、それに続いて東方達も立ち上がった。そして、まだしゃがみこんでいる仁王を見下ろす。

「どうする?お前は…」
「俺は、お前らとは違って特別な能力みたいなもんはない…。それでも、足を引っ張るつもりもない。」

仁王は立ち上がり、橘の拳に軽く自分の拳をぶつけた。

「行こうか。」
「おう。」

東方と忍足を先頭に、橘達は歩き始める。そして、その後姿はだんだんと夜の闇の中に消えていった。

 入り口を過ぎてから、どうも柳は落ち着かなかった。今までに感じたことのないくらい嫌な予感がする。この調子でいけば任務は達成され、自分たちもやっと本当の意味で自由になれる。しかし、酷く胸騒ぎがしてならない…。
 柳は、自分よりも先を行く真田の腕を掴んで引き止めた。真田は突然の行動に困惑した様子で振り返る。

「どうした?蓮二。」
「行ってはいけない。」
「…蓮二?」

様子がおかしい柳に首をかしげる真田。柳は真田の手を引いて来た道を引き返し始めた。

「お前は行ってはいけない。何か、良くない事が起こりそうなんだ。」
「…どういうことなんだ?」
 「良くない事、起こっちゃったみたいッスよ?」

その声に柳が振り返った時にはもう遅く、強い衝撃で壁にぶつけられた柳は腹部を深く突き刺されていた。

「かはっ……!」

喉を通った血が口から溢れ、相手の肩を真っ赤に汚す。真田は破魔刀を切原に振り下ろそうとするが、何かが爆発するような爆風に吹き飛ばされ、気を失った。

「げん…いちろぅ……!っぐ、ぁあっ!」

突き刺さった剣を引き抜かれ、その鋭い痛みに悲鳴を上げる。深い傷からは血が止めど無く溢れ、なんとか言葉を発そうとする柳の口からは、言葉よりも血のほうが多く流れ出た。苦痛と怒りで溢れた涙が、赤みを帯びながら柳の頬を流れていく。

「いらない駒は捨てろって言われてるんでね。」

切原は残酷な笑みをたたえたまま言い放ち、柳の体を突き倒した。柳は苦痛にうめき、傷を押さえて切原を睨む。しかし、何よりも痛みが勝っている。激しい憎悪を含んだ視線を向けるものの、それは苦痛に歪む顔でしかなかった。



「でも、何かおかしいんだよな」(橘)
「何が?」(東方)

赤澤達を助けるべく歩いていた俺達だが、ふと橘が全員に問い掛ける

「確か鍵は5人って言ってたよな?」(橘)
「あぁ」(忍足)
「でも連れていかれたのは内村・幸村・柳生・赤澤の5人だけなんだ」(橘)
「そういえばそうやね」(仁王)
「あと1人たりないんだよ」(橘)
「……」(千石)
「どうしたんだ千石、さっきからずっと黙りこんで?」(東方)
「ううん、何でもないよ気にしないで」(千石)
「?調子とか悪いんだったら戻った方が…」(東方)
「ホント何でもないだって、気にしないで」(千石)
「そうか?それならいいけど…無理はするなよ」(東方)
「うん」(千石)

俺たちは先を急ぐ
そして東方が何かに気付き足を止める

「どうしたんだよ東方…って柳!?」(橘)

東方の視線の向こうには血だらけの柳が倒れていた。

「大丈夫か柳!」(東方)

橘が問い掛けると柳は小さな声で言った

「…げ、んいち…ろうが…」(柳)
「真田が?」(東方)
「つれ、て…いかれた」(柳)
「まさか5人目って…」(千石)
「ふっ…ぶざま、だな俺も」(柳)
「喋らないで柳くん…橘、俺柳くんを南ちゃんの所まで連れて手当てしてくるよ」(千石)
「大丈夫か1人で…」(橘)「うん、大丈夫だよ…早く行って」(千石)
「でも…」(東方)
「早く!」(千石)
「千石?」(橘)
「5人そろったんだ…早く行かなきゃ大変な事になるんだよ!」(千石)

と千石は何かを唱えるそして出したものは3台のバイクだった

「さ、これに乗って早く」(千石)
「千石…柳を頼んだぞ」(橘)
「うん、任せといて。柳くんの手当てが終わったら俺もすぐいくから」(千石)

俺たちはバイクのエンジンをかける。
運転するのはもちろんバイクを乗った事がある橘と仁王だ
橘の後ろには東方が仁王の後ろには忍足がそれぞれ乗り前に進み始める

「さぁ、俺たちも行こうか」(千石)
「…な、んで俺を、助けた」(柳)
「君の力がいるから…じゃあ駄目?」
「……」
「それに君だって真田くんを助けたいでしょ?」(柳)
「…」
「それに…橘たちだけじゃあの方に勝てるかわからないからね」
「っ!お前、まさか…あの時の」
「ふふ、あの時は大変だったよ本当に」(千石)

千石は笑い柳を抱き上げる

「!」
「おとなしくしててよ」

千石はエンジンをかけて元来た道を戻る
そして南たちのいる場所につく
南たちは柳を見て最初はビックリしたがすぐに手当てを始めた
「血は何とか止ったけど…まだ痛む?」(大石)
「少し…な」(柳)
「じゃあ効くかわかんないけどおまじないしてあげるよ」(南)

南は柳の傷の上に手を乗せた
そして擦るように手を動かす

「どう?」
「なんか…傷が塞がった気がするぞ?」(柳)
「まっさかぁ〜…」

千石はそう言い柳の傷を見た

「あっ本当だ…ι」
「うそ…」(南)
「南くん傷を直せるなんてすごいね!」(大石)
「とにかく助かったありがとう」(柳)
「じゃあそろそろ行こうか」(千石)
「あぁ」(柳)
「気をつけてね」(大石)
「あぁ」(柳)

千石は柳を後ろに乗せて前に進み始めた。
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