ドリームの扉
□すれ違いの 時
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道。
いつもの道。
すれ違う人。すれ違う景色。
すれ違う言葉。
「あっ…」
どこかで見た顔。
誰だっけ?
「ん?」
流し目で私の方を見てきた。
街を歩く人。
「ほ、…寶条翔っ」
相手に聞こえないくらい、口の動きが見えないくらいに、思い出した言葉を呟いた。
「お嬢さん、どうかされましたか?」
「えっ!? あっ、いやその…」
まさか声を掛けられるなんて思ってもみなかった。
「名無しさんさん」
「…えぇっ!?」
「そちら、落とされましたよ」
爽やかな笑みで私に告げた。
「あっ!」
持ち物がいつの間にか落ちていた。
名前が書かれたメモノート。
この人に驚いたからだろうか?
「ふふふ。じゃあ、これで失礼致します」
そう言って、優雅に後ろ姿に変わり去っていった。
「かっ…」
疑問よりも先に気持ちの高ぶり。