宝物・捧物

□【辻が花】黒猫子様より
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倖様より

白鬼+香
ウザ澤注意











「衣装交換しようよ」

「……………は?」


天国の極楽満月まで、注文していた薬を受け取りに来た鬼灯。
出合い頭に飛んで来た言葉に、担いでいた金棒を床に叩き落とした。


「呆けましたね…ジジィ」

「いや、呆けてないけど…」


白澤はモソモソと服を脱ぎ出す。


「何脱いでんだ…。皮剥ぐぞ」

「剥ぐなよ。ほら、鬼灯も脱いで…!」

「ほら、じゃねーよ。何考えてんですか」

「何って。だから衣装交換…」


ハァ…と鬼灯は溜め息を吐く。
もう阿呆としか言い様のない名高き何処其処の神獣。
神獣のクセに考える事が幼稚すぎる。


「まったく…。付き合ってられませんよ…。それより」


薬はまだですか?

鬼灯は若干苛立っていた。
毎度毎度、納期を守った事のないこの漢方医。
言っても無駄だと知りつつ、鬼灯はムシャクシャする気持ちをぶつける対象が欲しがった。


「衣装交換してくれるなら、出してあげる」

「ふざけんな。出来てるなら早く寄越せ」

「可愛くないなぁ」


既にパンツ一丁の白澤。
脱いだ衣服を鬼灯に差し出し、逆に鬼灯の衣服をせがんだ。


「しません。断じて」

「……………」


椅子に腰を下ろし、そこらにいた兎を拾い上げて撫でる鬼灯。
八割裸の白澤は完全無視だ。
受け答えするのも面倒になり、強めに断ってみる。


「鬼灯は…、僕の事…嫌いなんだ…」

「…………はい?」


俯いた白澤の背に陰が射す。
どよーんと湿っぽい空気が辺りを支配する。


「嫌いだから、僕の服着てくれないし、僕に服貸してくれないんだろ…?」

「何故そうなるんですか」


ウルウルと涙目を鬼灯に向ける。
八裸に涙目とは、なんとも間抜けな神獣だ。
鬼灯は溜め息が止まらない。


「鬼灯ぃ…」

「……あーも、何なんですか!」


ガタンッ、と椅子から立ち上がる鬼灯。
周りに寄っていた兎は一斉に散らばった。


「本当に面倒臭い方ですね」


恥を知りなさい!

そう言って、鬼灯は戸の方へ向かった。


「あれ?…鬼灯…?」

「帰ります。また後日伺いますから、その時にはちゃんと薬寄越せ」

「え、ちょっ!後日って…!」


待って鬼灯!!

白澤は腕を伸ばし、店を出ようとする鬼灯の着物の貝の口を掴んだ。
急な衝撃に、鬼灯はバランスを崩して後ろに倒れそうになる。
なんとか態勢は持ち直したが、引っ張られた帯はスルリと落ちてしまった。


「いただきッ!!」

「あっ、こらッ!!」


白澤は、鬼灯の解けた帯を拾い上げ、着物を剥ぎ取った。
剰え、よろけて動けないのを良い事に、緋色の襦袢まで奪い取ったのだ。
なんとも鮮やかな身のこなし。
恐るべし神獣白澤。


「いつも脱がせてるからねー」


さすがに慣れたよ

飄々と抜かす白澤。
一瞬の出来事に、鬼灯は暫し呆然と立ち尽くしていた。
しかし暫くして、自分がステテコ一枚にされている事に気付くと、カァッと赤くなって白澤を殴りに掛かった。
白澤はそれをヒラリとかわし、奪った鬼灯の衣服をいそいそと着出した。


「どぉ?似合う?」

「返せ馬鹿。脱げ今すぐ」


言葉に抑揚はないが、鬼灯は相当キレていた。
一触即発。
次何かやらかしたら、間違いなく白澤は塵にされるだろう。


「はい。鬼灯はコレ着るの!」

「あ゙ぁ?」


青筋おっ立てた鬼灯をもろともせず、白澤は鬼灯に自分の衣服をグイグイと押し付けた。


「………ッ、この腐れ変態…!」


鬼灯は白澤の差し出す衣服をぶん取った。
白澤の思い通りになるのは癪だが、今の自分の格好の方がよっぽど洒落にならない。
殴り倒して沈めてやりたいが、まずは服を着る事が先。
白澤をミンチにするのは、それからでも遅くはない。


「うっわー感激!」


白澤はケータイを取り出し、パシャパシャ写メを撮り出した。
鬼灯はムスッと膨れている。
慣れない中国服に薬草臭い白衣。
いっそとステテコも脱いでズボンにも足を通す。
しかし、白澤にピッタリのサイズのこの服は、些か鬼灯には窮屈だった。
身長は然程変わらないにせよ、多少鬼灯の方がガッチリしていた。
細身の白澤の服は、当然合わない。


「しかしそこがまた良い…」

「逝ね…」


白澤は三角巾を外し、鬼灯の頭に付け替えた。


「こうして見ると、やっぱり僕達って似てるよね」

「似てねーだろ」


ドッカリと再び椅子に腰を下ろした鬼灯。
頬杖を突き、止まらない溜め息を惜し気もなく漏らした。
白澤は鬼灯に向かい合うようにして座り、ニコニコと鬼灯の顔を覗き込んでいた。




「…て、言うか、いつまで着てる気ですか」


暫くほのぼのとした空気が流れつつあったが、やはり鬼灯が現実に引き戻した。


「もうちょっと…ね?」

「…誰かから見られたらどうすんですか」

「大丈夫!」


白澤はドンと胸を打った。


「ちゃーんと看板は仕舞ってあ」

「ごめんくださぁい」

「……あっれー…?」


看板は仕舞ってある、と言い掛けた白澤。
しかし、なんの躊躇もなく、店の戸は開いてしまった。


「お…お香ちゃん…」

「冷え症のお薬を…、?」


白澤様…?

お香は白澤を見て首を傾げた。
鬼灯はパンと額を平手で打った。


「………………ああ、」


お香は暫く白澤と鬼灯を交互に凝視し、独り納得したように頷いた。


「お邪魔だったかしら?ふふふ」


ガラガラ…ピシャッ

お淑やかなお香は、お淑やかに笑んで、お淑やかに店を後にした。




「…あの…、」

「あ゙ぁ?どうしたよ。死ねよクソ神獣」

「僕は死にましぇん!!」


鬼灯は目にも留まらぬ速さで白澤の頭を金棒で吹っ飛ばした。
かつて白澤だった物体は最早モザイクものである。


「………ハァ…」


大変ご立腹の鬼神様は、へばっている神獣の衣服を剥ぎ始めた。


「いやーん。えっち」

「……………」

「…ここで無視とか、逆に新鮮」


無言で自分の着物を奪い返し、無言で身に纏う衣服を脱ぎ捨て、無言で着物を着直して、鬼灯は静かに店を出ようとした。


「せっかくだからさ、あのまま着エロに持ち込みたかったんだけど」

「知るか色呆け爺。独りで手淫してろ」


吐き捨てて、鬼灯は戸も閉めずに店を出て行った。


「…………」


後に残されたのは、パンツ一丁で床に這いつくばる哀れな神獣。
うつ伏せから頬杖を突いて、愛しい鬼灯の後ろ姿を見送っていた。


「赤くなってら…」


遠くなっていく鬼灯の、黒髪から覗く尖った耳は、先に見た彼の襦袢のように真っ赤だった。
誰かに見られたのが、相当恥ずかしかったようだ。


「あ、写メ拡大してポスターにしよ…」


八裸の神獣は悪い笑みを漏らしながら、ケータイ画面の仏頂面に口付けた。











「もしもし?牛頭さん?新しい作品の事なんだけど…」


お香はネタ帳…もといメモ帳片手にケータイに向かって話していた。


「衣装交換なんてどうかしら?」

『いいわぁ!ナイスアイデア!』

「ストーリーも大体考えてあるの。急いで帰るわ」

『待ってるわよぉ』


ケータイを閉じたお香は、満面の笑みを浮かべていた。
獄コミのいいネタが手に入り、ご満悦の鬼女であった。




-終-




47000hitキリ番
倖様に捧げます(*´∀`*)

お香さんの登場が一瞬…
それに気付いて付け加えたら、お香さんが腐女子になりました(´・ω・`)

しかも意味不明な展開…
オチ行方不明…

こんなんで良ければお受取り下さいませ(・∀・)ノ


改めまして、リクエスト有難うございましたヽ(´▽`)/








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