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□いつだって終わる理由を探している
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僕達はいつだって同じ様に傷付いて、お互いの傷を確認する様に肌を重ねあった。
それがどんなに滑稽なことであろうとも、そうせざる得なかった。
何故ならその傷が深すぎるのをお互いに知っていて、そのポッカリと空いた穴を塞ぐことなんてのは出来ないのを知っていたから。


『世界が終わる瞬間を迎えたら、槙島さんは何を願いますか?』


滑らかなシーツに絡まりながら虚ろなその瞳に僕を映して尋ねた君。
世界が終わる瞬間。
この、シュビラに監視され飼育されている世界の終わり。
人々の魂の煌めきが戻るかもしれない世界の始まり。


「ふっ」


思わず鼻をついて出た笑いに彼女は不満そうに眉間に皺を寄せる。
何が可笑しいのか問いただすような視線がとても愛らしくて、彼女の柔らかい髪を指で掬い上げた。


「世界の終わりを楽しみにしているだけで、願うことなんて何もないよ」


『そうなんですか?』


満足のいく答えではなかった様子の彼女は不思議そうな表情で僕を見つめる。
彼女の柔らかい髪が指先からするするとシーツの波に呑まれていくのを眺めていると、彼女の唇がまた動き出す。


『わたしが世界の終わりに願うこと、知りたいですか?』


丸い瞳が僕を映す。その瞳の中に映り込んだ僕はいつもと変わらない表情をしていた。


「君が願う世界、か。…興味深いね」


僕の答えにニコリと笑う君は純白そのもので、世界の穢れを一つも知らない、何も知らない赤子の様に無垢そのものに見えた。
目に見える君はそうでも、頭の中や心の奥底では、いつだって世界を拒絶して憎んでいる。
赤黒いマグマの様にドロドロと全てを飲み込む感情が渦巻いてるんだろ?


『あたしがここに居なくても良い世界、ですよ』


ニコニコと笑う彼女から吐き出されたのは、死を願う声。


「シュビラという神様が管理する善と悪では君も僕も裁かないからね」


『何をしても許される世界なんて、わたしはつまらないんですよ。何をしても許されてしまうから、心が何も感じなくなってしまった。周りの人達は人間らしい感情の下で生活してるのに、何でわたし達だけ透明人間の様な扱いを受けなければいけないのか不思議じゃないですか?』


周りが見たら笑っている様にしか見えない表情。
怒っている彼女を世間は見えていない。見ようともしない。
それに気付くのはいつも僕だけ。
それが少しだけ心地が良いと言ったら彼女はどんな反応をするんだろうか?



「…君の瞳に映るこの世界は、一体どんな色彩をしているんだい?」



僕の質問に彼女は微笑む。
幼い少女の様に無垢なその笑顔で、とてつもなく残酷や言葉を吐き出すんだ。


いつだって終わる理由を探している


『私はいつだってこんな世界滅びれば良いと強く願ってますよ』


ニコニコと笑いながら唱える滅びの言葉は、いつ天に届くのだろうか?




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