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□ご褒美
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『あ、あめだ…』


ぽつりぽつりと降りだした雨が鼻先をかすった。
死臭が漂う焼け焦げたわたしの住んでた村は、わたし自身の手でぶち壊してやった。


「Hey!!Crazy Girlr!!」


聞き慣れない言葉が雨音に混じってわたしの耳をくすぐるから、余韻に浸るひまもなく振り返る。
その人はまさしく蒼そのものだった。
真っ黒い中で蠢く蒼。
晴天のような明るさではなく、雷を落としてきそうな深い、深い、蒼。
あー…面倒くさいなー…


『なに?』


「てめーの村を壊滅させた気分はどんなもんなんだ?」


よくわからない質問だ。
この人は何が聞きたいのか皆目検討もつかない。
明らかに怒気を含んだ声色のくせに、そんな質問を投げ掛けてくる。
本当に面倒くさい。


『悲しいよ』


「Ahー?」


『悲しいよ。命令とはいえこんなことしなきゃならないなんて悲しい…』


「おまえは…」


『わたしをずっと傷付け続けた村の連中がこんな生ぬるい死に方なんてかなしいよ』


にっこりと笑いながら刀で死人の首を飛ばすと、その人は目を見開いて刀を構えた。
あ。六本持ってる。
ってことは、


『あなた、伊達の小童?』


「Ha!!てめーに小童呼ばわりされる筋合いはねえっっ!!」


『信長様の邪魔者かぁー…』


こいつを此処で蹴散らせておけば信長様に褒めてもらえるかも。
自然と口元が歪んでしまう。
ああ。ここに蘭丸くんが居なくて良かった。
絶対に嫌われる。


「さすが魔王軍ってか!!明智みてーに腐った顔してやがる」


『やっぱり光秀みたいな顔してるんだ。蘭丸くんに嫌われちゃうなー』


「とりあえずてめーの首は奥州筆頭伊達政宗が頂くぜ」


六本の刀がわたしを狙っている。
面倒くさいと思っていたけど、楽しめそう。
しかも信長様に褒めてもらえるおまけつきなんて美味しすぎる。


『どうやって死んでもらおうかな。どうせだったら』


「ちっ…!!」


『死んだ方が楽だってくらいに苦しんでもらおうかなー』


刃と刃が交わるこの瞬間が心地好くて、哭く様に響く甲高い音がぞくぞくとする。
歪んだ笑顔が更に歪んで、独眼竜の一つしかない目玉に映りこんだ。


『さぁさぁ始めましょう。魔王軍に相応しい阿鼻叫喚の狂宴を』






ご褒美


信長様に早く会って、濃姫様に頭を撫でてもらおう。


光秀には美味しいお茶を淹れてもらって、蘭丸くんとお団子を食べるんだ。


だから


『早く死んでよ?』




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