『半兵衛ー』
「なにー?」
本日中に完成させなきゃならない書簡の上に突っ伏して眠りそうになっている彼をゆさゆさとゆさぶる。
いったいこの不毛な行為は何回目になるのだろうか。
数えようとして、数えきれないことが直ぐにわかってやめた。
本人曰く身体をやすめて頭を働かせているらしいけど、わたしからしたらいい迷惑だ。
『寝ないでよー』
「おきてるよー」
『寝るならもあ半兵衛の仕事手伝ってやんないから』
ぼそっと呟く様に言ったのに、彼はむくりと起き上がりわたしの腕をつかんだ。
効果は抜群だ。
「それは困る」
『ならちゃっちゃっと仕事片付けて』
積み重なった書簡の一つに手を伸ばして総量が視界に入って具合が悪くなりそうだ。
はぁー…半兵衛が溜め込みさえしなければ、私が手伝う必要なんてなかったのに。
「ねぇねぇ」
『ほら、話してる暇なんてないんだから!!』
「これが今日中におわったら、何かご褒美ちょうだいよ」
『はぁ?』
半兵衛の言葉に耳を疑いながら顔をあげると意外と近くに居て驚いた。
そんでもってその表情は限りなく笑顔に近い。
こんな時の半兵衛は必ず録なことを考えてない。
頭が良すぎるのも考えものだ。
「ねぇねぇ、だめ?」
『〜〜〜っ』
くそぅ。この顔は反則だ…
『わかった!!終ったら聞いてあげるから早くおわらせ、て…』
わたしが言い終わる前に半兵衛は仕事にとりかかっていた。
何か…
『してやられた気がする…』
天才軍師
「終わったー!!」
『はやっっ!!初めからそうやってくれれば』
「はいはい。じゃあご褒美に膝枕してよ!!」
『はぁ!!? 』
「なに?約束破るのー?あんなに頑張ったのにー?」
『〜〜〜っっ!!わかりました!!』
「やったー!!」
縁側でわたしの膝の上に寝転がる半兵衛はやっぱり、当たり前だけど天才軍師だと思った。