『んー…』
綺麗な長い黒髪をさらさらと靡かせながら伸びをする女はとても人斬りをしてきてたとは思えないほど、穏やかな表情で笑っている。
整った妖艶な顔立ちは遊女や、どこぞの姫様より綺麗だと思う。
こんな綺麗な女が魑魅魍魎よりおっかないなんて誰が思うだろう。
『なにしにきたのー?』
「あら、ばれてた?」
『気配消す気なかったでしょ?』
「恋人に会うのに気配消す必要ないでしょ?」
隣に腰をおろすとすっごい顔で睨まれた。
おっかなーい。
『佐助の恋人になった覚えはありません』
「じゃあ今からなっちゃいなよ」
『なにそれー』
「男前で、強くて、家事も炊事も出来て、給料はちょっと安いけど、あんたを幸せにできる。どうよ?」
女の目の前に顔を近づけると女は瞬きもせずに俺様の顔を見つめてくる。
真っ黒な瞳の中に映る俺様は、そのまま吸い込まれてしまいそうな程に澄んでいた。
『こんなに色気のない告白は初めてだよ』
「毛色が違っていいでしょ?」
額をくっつけて笑うと女は小さく笑いながら瞳を伏せて、俺様の首に手をまわして瞳を開いた。
あつーい接吻の一つでもしてくれるのかと思ったら違った。
その瞳にぞくっと背筋が粟立った。
「まじかよ」
『ねぇ、佐助は私より強いかな?』
「じょーだん!!俺様に幻術かけてどーすんのさ!!」
『私は私より強くないと人を好きになれないから、早く私の幻術解いてみて』
目の前で妖艶に笑う女はやっぱり綺麗で、このまま抱いてしまいたいのに身体が言うことをきかない。
あー…早く妖術解かなきゃ。
命懸けの告白
こんなに恋焦がれているのにおでこしか触れられないなんて…
俺様けなげすぎでしょー