『クラウドがわたしに優しくするのって罪滅ぼしなんだとおもう』
「え…?」
彼女が言ったことが全く理解出来なかった。
それなのにそれは簡単に俺の身体中に突き刺さって身動きがとれなくなった。
呼吸すら出来なくなるほどに苦しくて、辛くて、…悲しくなった。
『ねぇ、もうわたしに優しくしなくてもいいよ』
「何言って…」
『クラウドはきっとそんなことしなくても自分を大事に出来るはずだから』
優しく笑う彼女が直ぐにでも消えて無くなってしまいそうで思わず手を伸ばして、彼女の枯れ木のように細い腕を掴んでいた。
『クラウド、もういいんだよ』
「ちがう、」
『クラウド?』
「ちがうんだ…」
身体を引き寄せて腕の中に閉じ込めると彼女の肩口に顔を埋めた。
鼻をくすぐる彼女の香りに胸が苦しい。
我ながら女々しくて嫌になる。
それなのに彼女を抱きしめる腕は強くなるばかりだ。
『クラウド、いたいよ…』
「ごめん、でも…離したくない…」
『クラウド、わたし』
「俺にはあんたが必要なんだ。罪滅ぼしとかじゃなくて、傍に居てほしい」
『わたしは』
彼女が放つであろう言葉に怯えた俺はぎゅっと抱きしめる。
それと同時に消えそうな声で、だめか?なんて聞いてしまった。
祈りに近いそれに彼女は小さく息を飲んで、肩を震わせ始めた。
『わたしが居たら、クラウドは自分を責めて、苦しくなるかもしれないのに?』
「俺は、あんたが、好きだから傍に居てほしい」
こんな時にティファに言われたことを思い出した。
過去に負けたのかな?
思い出す度に苦しくなる言葉が、今は俺の背中を押している様に思えた。
「過去にあった出来事なんて、関係ない」
『けど、あたしは、…違う、あたしの所為で』
「泣かないでくれ…」
『クラウドまで、こんな想いを、しなくていいの。これは、あたしの』
なんでこんなにも自分を追い詰めるのだろうか。
俺はあんたが笑ってくれたらそれだけでいいのに。
いつもあんたを傷つける。
一緒に居なければこんな想いをさせないのか?
「………ちがう」
『えっ…?』
「たとえどんなにあんたを傷つける存在であっても、俺はあんたと一緒に居たい」
『くら、うど…』
そうだ。
俺はきっとあんたが笑ってくれたらなんだっていいんだ。
その隣に居るのは俺じゃなければ嫌なんだ。
「あんたまで居なくならないでくれ…」
自分の気持ちが見えて、俺は全ての戦いが終わって初めて泣いた。
夢のあと
彼女は俺の名前を呼びながら少し泣いて、背中に腕を回してくれた。