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□流星の群れ
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「やっぱりいた…」


誰も寄り付かない様な静かな海岸で体育座りをしてひたすらに夜空を眺める彼女。
今日、彼女があった嫌な出来事を耳に挟んだ俺様は自然とそこに来ていた。
ちょっと無理して買った大型二輪が、海風で汚れるのを知っときながら来てしまった。


『………………』


首が痛くならないのかと疑問になる程、上だけを瞬きもしないで見つめる彼女はまるで世界から切り離されたみたいに動かない。


ジャリ


俺様がテトラポッドの上を歩く音すら耳に入ってないんだろう。


「なーにしてんの?」


『……流れ星、見たいなって』


俺様が声を掛けて隣に座っても彼女はやっぱり上だけ見ていて、質問に対する答えだけが、波の音に混じって微かに聞こえてきた。
それだけのことなのに俺様は泣きたくなる。
俺様の心臓の奥の奥の方が小さく悲鳴をあげてる。


「流れ星、見えた?」


『…見えない…』


彼女はいつも流れ星を探してここに来ている。
嫌なことがあった時だけひたすらに流れ星を探してる。
なんで、そんなに流れ星を探すんだろって考えてた時期もあったけど、その理由が直ぐにわかって考えるのをやめた。


『佐助はさ』


「んー?」


『待ってるの得意?』


「俺様、待ては嫌い」


『そっか』


「ついでに言うと待たせるのも嫌い」


『わたしは待ってるの得意、だったはずなんだけどなー…』


ぎしぎし、古い廊下を軋ませるみたいに脳が軋んだ気がしたのは気のせいなんかじゃない。
彼女はいつだって待っているんだ。
永遠に叶うはずない願いと一緒に、流れ星を待ってる。
ねぇ、君の瞳にこの星空はどう映ってるの?
簡単には流れてくれない星屑達にどんな想いを馳せているのさ?


『なんで皆、簡単に諦めちゃうのかな…』


「ははっ。それきつい冗談じゃない? 」


『そうかな…?』


「そうだよ。実現しないことを望みつづけるなんて出来るわけないじゃん」


『……………』


「君が望む現実はただの妄想だよ」


『そっか…』


俺様が放った言葉は間違いなく彼女を傷つけた。
上を見ていた首は自然と地上へと戻ってきて、静かに揺れる波間を見つめている。
そんな彼女を見ている俺様はきっと醜く歪んだ笑顔をしているんだろう。
戻ることのない現実を望む彼女は誰かのちょっとした一言に深く傷付いて、ここへやってくる。
そして流れ星を探して、願う。
そんなの馬鹿げてる。


『佐助』


「ん?」


『ありがとう』


夢を見る彼女の願いを丁寧に一つずつ打ち砕いてあげる俺様に、彼女は決まってお礼を言うのは


「…ねぇご飯食べに行こうよ」


『うん』


きっと彼女も心の奥の奥の方で現実と向き合っているから。






流星の群れ




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