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□ざまあみろ
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「貴様、許さぬ…!!」


『…………………』


眼光だけで人を殺してしまいそうな手負いの獣。
目の前で息も絶え絶えにあたしを許さないと叫ぶ。
当たり前だ。
あたしが国を滅ぼそうとしてるんだから。


「此ような屈辱決して忘れぬ…!!」


あたしは満面の笑みを浮かべて顔を近づけて髪の毛を掴む。
屈辱、憎悪、苦痛に歪む顔が嬉しくてたまらない。


『馬鹿だなぁー。それはあたしの台詞だよ?』


「ぐっ…うっ…!!」


『あんたが奪ったあたしの人生、あたしが今までされたこと忘れてると思ったの?ねぇ?』


「き、さま…っっ!!」


掴んだ頭に力が入って苦痛に顔を歪める獣に、ぞくぞくと鳥肌が立つ。


『あんたの気紛れであたしの旦那殺して、強姦されて、畜生の家に嫁がされて、いつもにこにこ笑ってんの不思議じゃなかった?』


「知らぬわ…この、愚図が…!!」


『そうだよねぇ?あんたはあたしに正室なんていう屑みたいな地位を与えてやったぐらいにしか思ってなかったんでしょ?』


「手を、離せ…!!」


『たかが女一人に国潰すなんてあんたも地に落ちたね?何が知将だ。獣と変わらない』


「貴様が、長曽我部なぞ捨てれば此のようなことに」


『巡りめぐって自分の国潰しかけてちゃ世話ないね?』


やっぱりあたしは満面の笑みで右手に持った短刀を獣の投げ出された手に突き立てる。
気持ちが良い悲鳴が聞こえて耳を澄ます。


『見渡す限りの火の海で』


『目の前には仇が死にかけで』


『心地の良い悲鳴を奏でてる』


『此処が世の果てってやつかな?』


「くっ、うっ、…貴様、の、方が、畜生、ぞ…」


息も絶え絶えに最期の悪あがきとばかりにあたしの手を払いのけて、突き立てられた短刀を抜き取り、あたしの喉元へと差し向ける。
呼吸をする度に切っ先が喉元に当たって血が滲む。
けれど今はそれすら楽しくて仕方がない。


「馬鹿に、するで、ないぞ、我は、日輪、の、申し、子で、あるぞっっ!!」


『ねぇ、苦しんでる?あんたが必死に守ってきたお家が滅んでいくのを目の当たりにして』


「毛利は、滅び、ぬっっ」


『もっと見せて?あんたの苦痛に歪んだ表情を。絶望に歪んだ表情を』


「地獄、へ、落ちよっっ!!」


切っ先があたしの喉元を突き破る前に隠し持っていた刃物で首筋を一思いに切りつける。
驚いた表情は直ぐに憎悪にまみれた表情に変わる。


『ばーか。…あんたに殺されてやるわけないでしょ?』


「くっ…かはっ!!」


一気に気の抜けた毛利元就が血を吐き出して倒れ込んだ。
それを満面の笑みで見届けてあたしは呟く。




ざまあみろ


あの世で精々悔しがって苦しめ




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