48G小説特別編

□亜香里は見てるから(すだれな)
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〜玲奈side〜





私、松井玲奈は栄高校2年。



ダンス部に所属していて、ダンス大会での選抜入りに向けて私なりには練習しているんだけど…





櫻井「おい松井!またそこで間違えてるぞ!そうじゃないって言ってるだろ!」





いつも間違えてばかりで顧問である櫻井先生に怒られる日々…



正直、もうどうしたらいいか分からないでいた…





櫻井「そうじゃないって言ったら何度分かるんだ!お前、やる気あるのか!」





部活終わってからも練習しているのに、どうしてこうも伝わらないんだろう…





櫻井「もういいよ…お前、帰れ。やる気のない人いらないよ。」

玲「そんな…」





やる気はあるのに…



それが櫻井先生に伝わらず、私はショックを受け、そこから動けなくなった…





櫻井「おい、さっきの話聞いてなかったのか?僕の計画に支障をきたす人はいらないって言ったんだ!ただ突っ立っていられたって邪魔なだけだっ!後、もう来なくていいよ。」

玲「…分かりました。では、さようなら…」





案外、素直に先生の言うことに従えた。



普通ならもう一度やらせてくださいって言うところなんだろうけど、もうそんなこと言う気さえ失くした私は、寄り道さえすることなく帰った。



もう…



どうでもいいや…



馬鹿馬鹿しい…





次の日、私はある決意を胸に、櫻井先生のいる部室へと向かった。



既に練習は始まっていたけど、今の私にはもう関係ない…





櫻井「…何?もう来なくていいって言ったよね?まぁやめるってんなら話聞いてあげてもいいけど。」

玲「…なら聞いてください。私はもう…」





…あれ?



頭が重い…



フラフラする…



何も…



考えられなくなってきて…



バタンッ!








〜あかりんside〜





須「…!?」





私、須田亜香里は今、ダンスの練習をしている最中だったんだけど…



部室に玲奈さんが入ってきて、櫻井先生に何か話そうとした途端、玲奈さんは突然倒れてしまったのである…





須「玲奈さん!」





そんな玲奈さんが心配で、亜香里はすぐに玲奈さんの所へ向かった。





須「玲奈さん!大丈夫!?…玲奈さん!」





玲奈さんの体を揺さぶりながら呼び掛けてみたけど、玲奈さんに亜香里の呼び掛けに反応する力があまり残っていなかった…





櫻井「一体何しに来たんだよ…どこまで僕の計画とは違う行動を取る気なんだよ…」





カチンッ。



櫻井先生には完璧主義な所があって、自分で立てた計画は何が何でも実行しようとするところがある。



そりゃあ計画立てるのは大事なことだと思うよ。



計画を立てればよりよくダンス部の活動がスムーズに行くと思うしね。



けどね…





須「…こんな状況でも、先生は自分で立てた計画の方が大事だって言うんですか?」





こんな時くらい、生徒の心配してあげていいんじゃないの…!



どこまで計画優先で行く気なの…!





櫻井「こうでもしないと、大会でより良い結果を出すことは出来ないよ。僕は1秒たりとも時間を無駄にしたくないんだ。」

須「…亜香里、玲奈さんを連れて帰ります。」

櫻井「え?」

須「生徒を計画の駒としか見ていない先生について行きたくありません!では!」

櫻井「お、おい!?須田!?」





亜香里のことを呼び止めようとする櫻井先生を無視し、亜香里は玲奈さんを連れて帰った。



ほんっとに最低な先生…!





数分後…





玲「ん…?」





玲奈さんを玲奈さん家の部屋のベッドまで運び、玲奈さんが目を覚ました。





須「玲奈さん、大丈夫…?」

玲「あか、りん…?うっ…!」





玲奈さんはおでこを手のひらで押さえながら辛そうな表情を見せた。





須「休んでて。玲奈さん、熱、すごいから…」

玲「熱…?」

須「うん、39℃あったから…もしかして、熱あるの気づかなかった…?」

玲「…うん。」

須「可愛そうに…熱出たのにも気づかないくらい追い詰めすぎて、追い詰められすぎちゃったんだね…先生に、色々言われてるせいで…」

玲「しょうがないよ…私、元々ダンスの才能ないし、何をやっても認めてもらえないし…何しても、もうだめなんだ…」

須「そんなことないよ。」

玲「実際、何度も同じとこで間違えてるし…先生の言うことはごもっともだよ…やる気もないだめな…」

須「その先は言っちゃだめだよ!」





亜香里はこれ以上、弱気な玲奈さんを見たくなくて、大声を出して玲奈さんから出てくる言葉をさえぎった。





須「玲奈さんは何も悪くない!悪いのは玲奈さんのことを人としてじゃなくて道具としか見てない櫻井先生だよ!櫻井先生が、玲奈さんのことを倒れてしまうくらい追い詰めさせたんだよ!」

玲「そ、そんなこと…」

須「それにね…亜香里は見てるから。部活でない時も練習している玲奈さんのこと。」

玲「え…?」





そう…



亜香里はずっと見ていたんだ。



部活でない時も1人で練習してきた玲奈さんのことを。



亜香里が知ってる限り、玲奈さんは1番の努力家である。





須「櫻井先生は知らないんだよ。計画通りに進めることばっか考えているせいで玲奈さんがどれだけ真面目に練習してきたか。ただ…」

玲「ただ…?」

須「…1つだけ、玲奈さんに足りないのがあるかも…」

玲「足りないもの…?」

須「…誰かと一緒に、ダンスの練習をすることかな?迷惑かけたくなくて、1人で練習してきたんだよね?でも…それだとお互い何かを吸収し合うことができなくて、よく分からないけど…そこが、玲奈さんの足りないとこ、なのかな…?」

玲「…よく見てるね。そう…私、どうしても迷惑かけたくなくて…」

須「じゃあさ…亜香里と一緒に練習してみない?亜香里と一緒に練習頑張ってみようよ♪」

玲「でも…」

須「迷惑だなんて思ってないよ♪むしろね、亜香里がそうしたいの♪これ以上、先生に色々言われている玲奈さんを見たくないから。先生のことすっごくムカつくからさ!見返してやりたいんだ♪先生のこと♪」





亜香里の思い、玲奈さんに伝わったのかな?





玲「…うん、じゃあ早速、お願いして…うっ…!」

須「わぁ〜!玲奈さん、今は休んでて!まずは、体を休めることを考えて♪練習はそれから♪ね?」





数日後…





櫻井「松井…その…悪かったよ…」





亜香里と一緒に練習してきた玲奈さんのダンスを見て櫻井先生はとっても驚いた表情を見せた。



やったね、玲奈さん♪





〜fin〜

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