喜八郎の見張り役

□友人の無駄話
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ざわざわと騒がしいランチ時の食堂。今の時間は丁度混んでる時間みたいで、おばちゃんからランチを受け取ったのはいいものの、ほとんどのテーブルが生徒で埋まっていた。
やばいやばい、と血眼になって空席を探す。奇跡的に一人分のスペースが空いているテーブルを見つけた。そのテーブルに入れてもらおうと、ほっと胸をなでおろしながら歩いていくとそこには、綾部くんが居た。お互い目が合い放心状態になる。マジか、マジか。大嫌いと言われた手前馴れ馴れしく話しかけていいもんじゃないだろうし…かと言って他に席ないから座るけどね!

一応テーブルの面々に一言かけて座る。正面の綾部くんと目が合ったので、こんにちは、と声を掛けてみたんだけど、案の定ぷいっと思いっきり顔を逸らされ無視された。で、ですよね〜…。
こうなることは予測済みで、あまり気にしてない風に装いご飯に箸を運ぶ。


「喜八郎、このくのいちと知り合いなのか?」

綾部くんの隣に座っていた忍たまがわたしたち二人を見て口を開いた。その綾部くんの友人であろう忍たまとわたしの視線は綾部くんへ。綾部くんはまたふい、とそっぽを向いてしまった。

「まったくこいつは…」
「はは…」
「うちの喜八郎が失礼な事しました。」
「いや、お互い様っていうかわたしが一方的に悪いんで…、こちらこそなんかすみません…」

綾部くんではなく、何故か隣のお友達が深々と頭を下げる。友人さん、とても友達思いでいい人だな。うちの喜八郎って言葉がすごく気になるけど。

「あ、えっと、わたしくのいち教室のハナ。あなた達と同い年です。」
「おっと、すまない、自己紹介が遅れたな!私は四年い組体育委員の平滝夜叉丸!教科も実技も学年トップの学園のスターだ!」
「は、はあ…」

すごい自信だな、と思ってたらこの後も長々とした自慢話を聞かされる羽目になった。いい人と思ってたのに、この人すごい自信過剰だったよ!
仕方なく平さんの話を聞いていると、綾部くんも周りのみんなもランチを食べ終え続々と食堂を出ていき、終いには平くんさえも「まだ私について話したい事がたくさんあるのだが…授業があるので今日はこの辺で!」とさっさと行ってしまった。わたしのお椀にはまだご飯が残っていた。そういや、わたしも授業ある!行かなきゃ!

「お残しは許しまへんで!」
「で、ですよね〜…」

立ち上がったところで、食堂のおばちゃんに止められる。急いでごはんを口に入れると、喉につまらせ噎せた。涙目になりながら、一人寂しい食堂でランチを食したのだった。




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