喜八郎の見張り役
□大嫌い
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放課後。宿題も予習も終え、昨日一昨日の様に綾部くんを探す。
昨日は綾部くんを探し出すだけで一日が終了した。綾部くんがわたしを避けていたのか、わたしがどんくさかっただけなのか。多分後者だけど…。
気合を入れて捜索開始したのだけど、なかなか見つからなかった。…やっぱり避けられてる…?周囲を見渡すと、落とし穴は昨日より増えている。綾部くんがここに居たのは確か。綾部くん見つからないし、これ以上穴が増えても困るので埋めることにした。
いくつかの穴を埋め、一息ついているとくしゅんと小さなくしゃみが聞こえた。その音を辿ると、浅い穴の中で綾部くんが丸まって眠っているではないか。こ、この子なんでこんなところで寝てるの…
「おーい、綾部くーん!」
声をかけてみても起きない。絶対ウソ!起きてるでしょ!揺すぶってみると、渋々というようにすこし不機嫌な綾部くんが目を開きこっちを見た。
「おはよう、こんな所で寝てると風邪引くよ?」
うんともすんとも言わず、綾部くんは不機嫌な顔でその場に座っていた。寝起き悪い子なの?なんなの?
ただ見ているだけじゃ切りがないので、穴を埋める作業に戻ることに。
「綾部くん、この穴埋めるからね」
「ダメ」
返事早。しかも、だめって…
「なんで?」
「綺麗に出来たから」
「じゃあこっちの穴は?」
「いいよ」
いいの!?素直に了承してくれるとは意外だった。それはこの穴が綺麗に出来なかったからなのかな?
てか落とし穴にそんな違いとかあるの…?埋めたらダメな穴と埋めていい穴を見比べる。わかった事は、両方とも綺麗でとても丁寧に作られているって事だった。綾部くんは本当に掘る事が好きなんだなぁ、て思い知らされた。う、埋めづらいことをしてしまった…。
「綾部くん、ごめん。昨日の落とし穴何個か埋めちゃった」
「君、やっぱ嫌い」
“やっぱ”!?こいつ嫌いかもって思ってたけど、勝手に埋めたことで嫌い完全体になったってこと…!?改めて嫌われたのわたし!?わりとショックである。で、でもわたしだって綾部くんの事別に好きじゃないし…
「わたしだって…」
「大嫌い」
「そ、そんなこと言ったってわたしはやめませんから…!」
涙目になりながら埋めていい方の穴を埋める。いくら関心ない人だとしても、人に嫌われるのはやっぱり辛くて、手元が震えた。
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