喜八郎の見張り役

□穴掘り小僧
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忍術学園敷地内には、あらゆるところに落とし穴がある。それは誰もが知る穴掘り小僧こと、忍たま四年い組綾部喜八郎の仕業だった。
それが最近、穴掘り小僧の穴掘りが加速し(というか誰も埋めない)学園中酷いくらい落とし穴だらけになっていた。落とし穴にハマり怪我をする人続出中で、医務室は大人気な模様。
忍術学園忍たま六年生の善法寺先輩は、毎日の様に落ちては同室の食満先輩に助けられている。善法寺先輩のそれは不運っていうよりもはやどんくさいだけじゃ……それはともかく、落とし穴の穴を埋めるという鼬ごっこの作業で、ただでさえ忙しい用具委員会への負担は大きくなっていた。
そこでこの異常事態にわたし、くのたま四年ハナが、食満先輩のお手伝いとして立候補したのだった。




「綾部喜八郎くん、こんにちは。君の見張りをする事になったハナです。どうぞよろしく」

今日もせっせと庭の地面を掘っていた綾部喜八郎を見つけ、穴の上から声を掛けた。綾部くんは穴を掘る手を止め今にも なんだこいつ と言いたげな顔でわたしを見上げていた。それもそうだ。綾部くんからしたらいきなりなんだって話だ。しかし、先生や先輩からの忠告に全く耳を貸さなかったらしい綾部くん、自業自得だよ。

わたしは食満先輩から、毎日の穴掘り小僧を監視し、時には注意もするし度が過ぎると穴を埋めることだってする、綾部喜八郎の監視役…見張り係を担った。
もちろん、暇な時でいいのだが。わたしは食満先輩の役に立てるんだ!と、とても気合が入る。


「あなたの穴でみんな困ってるんです。あなたが穴掘りを少し控えてくれるなら、落とし穴を自分で穴を埋めてくれるなら、わたしは君に構いません。」
「そう」

“そう”って他人事みたいに…。それって肯定でいいの?口数も表情も少なく感情が読み取れない綾部くん。その綾部くんの返答の意味を悩んでいると、綾部くんは穴から這い出て来て鋤を肩に担ぎ校舎裏の方へ歩いていってしまった。


「ちょ、ちょっと綾部くん!待って!」


案の定綾部くんは穴を埋めてくれる筈がなかった。
なんか嫌な言い方だけど、それからわたしは綾部くんを追いかけ回す日々を過ごすことになる。





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