いちばん

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私の話を一生懸命に聞き、同感してくれる彼女。そんな話し甲斐のある千鶴に私もついつい話し込んでしまう。戦輪を教えてやる、と言った時も、一生懸命に私から教わる千鶴の姿がとても愛らしかった。ここの所、毎日千鶴に会っているような気がしなくもない。千鶴も相当私に憧れている様だな。

「グフフフフ…」

思わず出てしまった笑いに、周りの視線を感じ咳払いを一つ。今日も食堂に行けば千鶴が私の話を聞いてくれるだろう。わくわく、と食堂を見渡すが、千鶴は見当たらない。ん?居ない?いつもなら居てもおかしくない時間だが。
下級生に混じって食事を摂る喜八郎の肩を叩く。下級生の私への熱い視線を感じるが待て、今はそれどころではないのだ。

「喜八郎、千鶴はどうした?」
「しらない」
「そ、そうか」

まあ喜八郎が知らなくて当然か。そう思うと妙に安心している私がいた。
いつも千鶴と一緒にいるくのたまに尋ねてみれば、千鶴は練習場で自習しているそうだ。このままでは千鶴が飯を食べ損ねてしまう。そう思い、私は一目散に練習場に向かったのだが、その道中で立ち尽くす千鶴と三木ヱ門を見つけた。一体そんなところで何をしている?
三木ヱ門と私の目が合った途端、青い顔で目を逸らすのだ。千鶴の足元の箱からは武具がいくつか飛び出ている。なんだ?この状況は。

「何をしてい…」
「ごめん!」

二人に一足近づけば、突然三木ヱ門が千鶴に頭を下げた。ん?ますます状況が理解できないのだが。
どうやら、二人は喧嘩をしたらしい。あの千鶴が三木ヱ門と喧嘩…。私の事で喧嘩したのだろうか。三木ヱ門に千鶴を紹介したときから、いい雰囲気ではなかった。関係のない千鶴を巻き込んでしまい千鶴に謝りたいところだったが、もうこの話は解決したらしい。目の前で握手を交わし笑い合う千鶴と三木ヱ門に少しばかり胸がもやもやする。

「そろそろいいか?」

その光景を見ていたがやはり落ち着かなく、二人に声をかける。

「滝夜叉丸、居たのか」
「なんだ?この私が…」
「まあまあ!!折角わたしと田村くんが仲良くなれたんだし!今日くらいは喧嘩はやめようよ!」

な、仲良く…?そういう私の心の声は、偶然にも三木ヱ門の声と被った。頬を染めて同感する三木ヱ門も満更でもなさそうだ。…千鶴は私のファンなのに…。三木ヱ門に構ってばかりで長らく私の方を見ていない千鶴の肩を掴む。

「千鶴、この私が迎えに来てやったのだぞ?」

千鶴は私のファンなのだろう?




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