いちばん

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食堂にて、目の前で昼食を取る喜八郎が突然頭を下げるものだから何事かと視線を追えば、そこに定食を持った千鶴が気まずそうに立っていたのだ。千鶴が喜八郎と知り合いだったとはな。いつの間に仲良くなっていたのだろう。
そして、千鶴が私達四年生と同い年だという事が喜八郎を通して判明したのだ。千鶴のあのあどけなさを見て一つか二つ年下だと思っていたのだが。ついでに出会った時から私に敬語だったという事を含めて。まあ、ファンということは私に憧れを持っているということだ、敬語なのも頷ける。だが、何故私は気がつかなかったのだろうか。仲良くなったと思っていたが、私は千鶴の事を何も知らない。なによりあの喜八郎の方が私のファンである千鶴に詳しいという事実が悔しいのだ。
私は自分にしか興味がなかったが…。私のファンである千鶴の事を知りたいと思う。

私が話を中断した事で、千鶴が私を心配した。終いには私の腹の調子を心配してくるのだ。どこか抜けている千鶴に正面から向き合う。

「千鶴」

この私に釣られて、ピシッと背筋を伸ばす千鶴。…こういう一面を見れば、千鶴が後輩だと言われても納得してしまうのだ。


「千鶴、喜八郎だけではなく、私にも気楽に話してほしい」

呆気にとられたような顔をする千鶴。やはり、こんな事をいう私はおかしいのだろうか。いいや、でもファンとの交流も持ちたいし大切にしたい。こんなことで弱気になってどうする私?

「な、仲良くなったのだから…敬語はち ょっと余所余所しくないか?」

そう勇気を振り絞り、彼女の手を強く握る。ファンだから、と遠慮する必要もない。じ、と見ていると私に見惚れて頬を染める千鶴。そんな千鶴はわかった、と笑って私の名を呼ぶ。滝夜叉丸くん、と千鶴の私の名を呼ぶその声を聞いて、私と千鶴の距離はうんと縮まった気がして嬉しくなった。


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こんな短文が非公開になっていた様で;
ごめんなさい;

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