ヴァンガ長編(性的表現有)

□現に一添えの想い4
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山の中腹に、アイチとトシキの家がある。
大股で走れば、すぐに家へと着くとアイチと見たこともない誰かが話をしていた。

「これっ・・・・」
渡されたのは綺麗なユリの花束。
恥ずかしそうに、若い男はアイチに渡し、「ありがとう」とアイチは花を受け止ると
男は「返事はまた今度」と言って、トシキの横を通っていく。

「お母さん」

困った顔をしてユリの花を見ていたアイチは、トシキの声を聞いて、ふんわりと笑う。
島に来た時よりも髪は伸びて、今は腰辺りまで伸びていて最近、農作業の時に邪魔だなと呟いている。

子持ちとは思えない、可愛らしい顔に小柄な身長に、本当に30歳近くとは思えない。

「おかえり、トシキ君」
「・・・・さっきの・・・誰」

自然と声のトーンが低くなる、アイチは混乱しているかのトシキのいつもとは違う様子に気づいてなく
花瓶もないのにと、どうしようと花の置き場に悩んでいる。

「村長さんの遠い親戚の方で、まだ独身なんだって?
この間、遊びに来た時に僕のこと見て・・今度食事でもどうですかって?」

今日、ちゃんと挨拶したばかりで本当に困った。
山へ出かけるところで、あんまりいい服も着てなくて、綺麗な花と釣り合わないのに
皆、そろそろアイチも肩を預けられる夫を見つけた方が良いと、いろんな男性を進めてくるが
親切なのは有難いが、トシキは手が離れつつというがまだ16歳なのに。

「行くの?そいつと食事」
「行かないよ、花のお礼は言うけど、まだそんな気はないから」

迷いなく、そう答えると嬉しそうにトシキが笑う。
何故笑うのかと、アイチに夫ができるということはお父さんができるかもしれないのに

思春期の男の子が、血も繋がりもない男を父と呼ぶのは抵抗があるからと。

「僕、山に木の実取りに出かけてくるね」
「俺が行くよ、お母さんは家にいて」
背負っていた収穫籠を奪うと、アイチは家でお茶でも飲んでてと、家に押し込む。
この間、足を滑られて山の谷間に落ちてしまい、トシキが真っ青な顔で探しに来てくれたことを思い出したのだろう。

「前みたいなことがあるから、俺がいく!」
「トシキ君には敵わないなぁ・・・じゃあ、お願いするね」
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