櫻井翔
□エリートサラリーマンの恋愛事情
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ここまで俺は、かなり順風満帆な人生だったと思う。
親父は結構お偉いさんで、実家はなかなかのオカネモチ。
学生時代の成績は常に上位五本の指に入ってたし、スポーツもそれなりにこなした。
友人も多い方だと思う。
だからこれまで、挫折らしい挫折なんて味わったことがなかった。
社会人になってもそれは変わらず。
就職活動はそんなに苦労することなく有名企業に内定をもらったし。
希望の部署に配属も決まった。
同期の中でも一番の出世候補で、年功序列という古いしきたりの会社にも関わらず、20代で係長になった。
来年度からは、課長になる予定だ。
そんな俺にも、どうしても上手くいかないことがある。
恋愛だ。
正直、モテる。
大学時代は、声を掛けてくる女の子は後を絶たなかったし、見た目がタイプの子とは付き合ったりもした。
が、如何せん長続きしたことがない。
“私のこと、ホントに好きなの?”
“何を考えてるのかわからない。”
“翔くんと一緒にいると、疲れる。”
…嫌いなら一緒にいないし。
…思ったことはなるべく口に出してたし。
…一緒にいると楽しいって言ってたんじゃねぇの?
でも、そもそもさ。
別れを告げられても、そんなに落ち込まないで済んでるってことは。
きっと、本気で好きだと思ってないんだろうね。