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□Snow Day
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ふと窓の外に目をやると、ちらほらと白いものが舞っているのが目に入った。
都会ではなかなか珍しい光景であり、しばらく外を見つめていた。
昔は雪が降っているとわかるとすぐさま外に走っていったものだが、今はこんな寒い日に雪ではしゃぐなんてとんでもない、とばかりに暖かい部屋に寝転ぶ。

先輩も見ているのかな、なんて。
ふと頭をよぎった考えに、思わずふっと笑ってしまう。
なんで、急に先輩のことなんか。

考えを紛らわすために立ち上がると、冷気が入ってくるのも構わず窓を開けた。
手のひらを上に向けてみると、雪がひらひらと落ちてくる。

ひらひら、ひらひら。

つかみにくくて、まるで先輩のようだとまたしても頭はあの人のことばかり。
手に落ちてきた雪を無くさないよう思わずぎゅっと握る。
そっと手のひらを開いてみると、そこに白いものはなく、ただ溶けた跡があるだけだった。

ほら、やっぱり。
つかみにくくて、でもつかめた、と思ってもやっぱりつかめてはいなくて。

手がかじかんできたので、素直に引っ込め窓を閉めた。
なんだかさっきよりもどんよりとした気分で、とても外の白さとは違うなとすこし自嘲気味に笑う。

こんな時には気晴らしに思い切って外にでも行ってみようか。
どうやら今日は冷たいものにあたりたい気分なのかもしれない。
かけてあったコートをはおり、マフラーと手袋を装備して玄関に向かう。
ドアを開けたらやっぱりそこには白い世界が広がっていて、たまらず一歩踏み出した。

「〜さっむ!!」

思わず声に出していた。
冷気は容赦なく隠しきれない素肌を刺し、痛い程だ。
しかし、ここまできたら引けないという謎のプライドが働いて、さっさとコンビニにでも行って帰ってこようと足早に歩き出した。

吐く息は白く、まつげまでが凍りそうだった。
首に巻いたマフラーを上げて口元を隠し、なるべく肌を風に当てないようにして歩く。

「あれ、もしかして狩屋じゃないか?」

あと数メートルでコンビニというときに、後ろから聞きなれた声がした。
思わず勢い良く振り返ると、ほら、やっぱり。
周囲が白いこともあって、桃色の髪が鮮やかに映えていた。

ひらひら、ふわふわ。

雪は静かに、優しく積もっていった。

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