禁断のdispareネックレス

□逆転した運命
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  次の日
 「…千鶴には夢とかある?…いや…もうすぐ死ぬ奴にこんなこと聞くのはどうかと思うけど…その…叶えてやれないかなって……」
"お兄さんのこと、日向って友達みたいに呼べたら嬉しいな。書くのも楽だし"
そんな書き込みに拍子抜けしてしまう。
「そ…そんなこと?好きにしたらいいだろ。他には?もうないのか?」
すると千鶴は少し迷ったような顔をしたが薄く細い小さな字で端っこに"一緒に遊びたい"と書き込んだ。ハッとしてそう書き込んだ紙をクシャッと丸め、自分の背中の後ろに隠す。
「…な…何で隠すんだよ?いいよ、遊ぼ。一緒に。」
"…でも…家庭教師は教えることしかできないって…言われてきたし…"
「いいんだよ。もう家政婦さんもみんな逃げちゃったんだから。千鶴と俺はもう生徒と教師じゃない。友達なんだよ。解る?と・も・だ・ち。」
そう言うと千鶴は今までの中で一番明るい顔をして日向に抱きついた。目には涙を浮かべている。…誰かの嬉し泣きなんて初めて生で見た。
"…友達…ずっと欲しかった…でももうすぐ失ってしまうんだね…死んじゃうから…"
「…本当に…ごめん。一時の感情の波によって千鶴の命を奪ってしまって…」
しかし千鶴は何も
書き込まず、黙り込んでしまった。思い詰めたようにじっと一点を見つめている。
「もし怒ってるなら…俺のこと殺しても良いから。殺されて当然のことをしたわけだし。」
"日向が死ぬのは今じゃない。僕にはちゃんと見えてるから…"
そして千鶴が涙を拭う。きっともって行き場のない感情に囚われてどうしていいのか解らなくなってしまったのだろう。日向はそう思っていた。千鶴の本当の気も知らずに。
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