俺にしか見えない
□思い残したこと
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「お前…何で成仏しないんだ?何か悔いがあるようにも見えないが。」
「成仏して欲しいんだ?」
「違う。疑問に思っただけだ。」
「秘密〜。そのうち解るよ。」
翌日の昼下がり。蝉の声が雨のように降り注ぐ中、窓から空を眺めていた。昨日死んだはずの威織と笑っていたのを聞かれたようで親は相当心配している。しばらく人里離れた別荘で休ませるとか何とか。
「見えてる俺がおかしいのかな…。」
「まあもしかしたらお前が作り出した妄想でしかないかもな。だって霊感のある人にも俺は見えないし。お前にしか見えないんだよ。」
「そうなのか!?」
何だか不安になる。自分も信じられないのに何を信じればいいのだろう。
「ゆう、俺が見えてる自分と、俺が見えない自分、どっちが好き?」
「そりゃもちろん…お前が見える自分の方が……。」
「じゃあそのままでいい。何も思い悩むことないんだよ。自分が好きな自分でいればいい。」
俺の横に立って同じように空を見上げる威織。あのときと同じような空だった。
「なぁ威織…」
「勇俊!早く準備しなさい!行くわよ!」
「……うん。」