創作夢ver.長編
□第六章
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【闇に紛れ、魂すらも狩りし者、自然を守護に持つ玄武の守護者、名をサイカ。陰陽の神子、知ってか知らずか、守護者を引きつけ、また一歩と歩き出す。】
『それで…いつまでついてくるつもりですか?サイカ君』
あれから食事を済ませると、最初の町をあとにしたヒメノたち。
少し大きな町が近場にあると知り、ゆっくり馬を走らせる。
ヒメノはまたマキの馬に一緒に乗せてもらいこれからのことなどを考えていた。
だが、ずっとついてきているサイカが気になりついに声にだしていた。
サイカは馬を使わず木々をつたい風を切るように素早く身軽な動きでついてきていた。
「そんなこと一々お前に言う必要はないよね。それより、馬にすら乗れないのかよ…マキさんに迷惑かけすぎ」
こっちを見ようともせずに冷たく言い放つサイカにムッとし表情を歪めるも少し辛そうになり、
───たしかにそうだけど…そこまで言わなくても……はぁ、嫌われてるだろうな〜私。あぁもう!ダメダメ!こんなことで落ち込んじゃダメ!!これ以上マキに迷惑かけたりしないんだから
急いで表情を読み取られないように前髪をいじり隠そうとする。
───…前途多難か……はぁぁ…このままじゃダメだね
表情には一切出さずに二人の様子を見ていたマキだが流石に耐えきれずにいた。
「サイカはこの旅に同行するの?」
馬の速度を緩め声をかけるマキにサイカも近くに近づき、
「うん、もちろん。まさかとは思うけど…マキさん約束破らないよね」
「心配しなくても破らないよ」
『…約束?』
当たり前のように答えていた。
そんなサイカに苦笑いを浮かべるも心配そうに聞き返す姿に安心させようと笑いかけながら返していた。
会話を聞いていたヒメノは不思議そうにマキを見上げる。
「昔、サイカと離れて少し旅とかするってなった時……」
───「俺もついていきたい!」
───「…ダメなのだ。連れてはいけないよ。天帝 太一君からの直属の命だからね」
───「やっぱり俺はまだまだ未熟だから…弱いから太一君も俺には命をくれないのですか?」
───「…僕にもわからないよ。太一君は何も教えてはくださらなかったから……ごめん」
───「俺はマキさんにそんな顔させたい訳じゃない……約束…」
───「え?」
───「約束してください!俺は絶対…」
「絶対今以上に強くなって貴女を見つけだします。その時はまた俺と一緒にいてください…って約束をこじつけたんですよね、俺が」
「そうだね〜……懐かしい」
懐かしみながら何かを思い浮かべているであろう二人を見つめていたが、ヒメノは不意に前を向く。
その不自然な行動にマキは首を傾げ
「ヒメノちゃん、どうしたの?あっ、やっぱり昔話とかつまらなかったよね…ごめんよ」
『ち、違う違う!!!』
苦笑いをし少し落ち込んでいるようにみえ、ヒメノは慌てて首を大きく左右にふった。
『た、ただ…羨ましかった…だけで……』
「羨ましかった?何が?」
『ぅぅ…笑わない…かな?』
恥ずかしがりながら小さな声でポツリとこぼした言葉にマキは───なんだか可愛らしいな〜、と思いながら優しく微笑み返し、
「笑ったりしないよ。だから、なんでも言ってみてほしいのだ〜。な、サイカ」
「…笑う」
「サイカ?」
「わ…笑わない!」
「ほら、どうぞ!」
その言葉を聞きまだ恥ずかしそうだが、
『約束とかサイカ君とマキの絆っていうのかな…それが…羨ましく思って……』
「………」
「………」
出てきた言葉にマキもサイカも目を少し大きく開かせ驚き黙り込む。
サイカは少し得意そうに笑みを浮かべ、
「お前、なかなかわかってるんだな。…まぁ、仕方ないから先に町に行ってなんか役立ちそうな情報でもみつけてきてあげるよッ」
そう言い残し一瞬のうちに姿を消していた。
ヒメノはその早技に驚き───もういない…サイカ君って一体何者なんだろう?、と頭を左へ右へと傾げはじめていた。
「ねぇ、ヒメノちゃん」
『ん?…ど、どうしたの、マキ?』
呼びかけに答え後ろを振り返り相手をみると真剣な表情でこちらをじーっと見つめていた。
「約束もその絆っていうのもこれからいっぱい作っていけるよ!結構な長旅になるかもだしね〜」
しかしそれは一変しマキはうんうんと頷きながら楽しそうにヒメノに笑いかける。
「大丈夫!これからだよ、これから!」
『う、うん!』
「よしよし!それじゃ、サイカも行っちゃったし僕たちも飛ばしていくよ!」
そういうとヒメノはまた嬉しそうに頷き、ぎゅっとマキに抱きついたのだった。
ーーー
ーー
『ふわぁ〜人がいっぱいだね〜』
あれから馬を走らせ着いた町は、祭りのように人や店で賑わっていた。
「ここは簡単に言えば、旅してる人たちの休憩場みたいな町だよ。だから結構な賑わいだし売られている物なんかも変わったのから珍しいのまでいっぱいあるよ!」
馬を宿屋の亭主に預け、ゆっくり伸びをしながらマキも町を見渡した。
ヒメノはその言葉にまた楽しそうに辺りを見渡す。
しかし、突然あることを思い出しマキの方を振り向く。
「??どうしたのだ?そんな青い顔して……誰かにガンでも飛ばされたとか?」
『違う!違うよ!!』
全く的外れな答えをクスクスと笑いながら言うマキに怒っているような焦っているような面持ちで首を横に振る。
『サイカくん!サイカくんと離れちゃったのに大丈夫なの?!だってこの世界に携帯電話…じゃないや!連絡手段なんて難しいんじゃ…』
───けいたい?でんわ??…ヒメノちゃんのとこにはいろいろ不思議な言葉だらけだな〜……今度何か教えてもらおかな〜
「大丈夫だよ!問題なしなし〜無問題〜!」
『えっ!で、でも!』
ニコニコしながら変わりなく手をぷらぷらと振るマキに少し不安を覚えながら後について行く。
「僕だけの連絡手段はいろいろあるから無問題!あと少しでサイカの待ってる場所に着くからちゃんと逸れずについてくるのだよ〜」
───いつ連絡なんて取り合ったんだろう?と不思議になりながらも、人の波に押され気味だが逸れないようにマキの腕にしがみつきながら足を進めた。
『はぁ…はぁ、はぁ』
人混みやらで息を切らすヒメノの背中を心配そうに撫でてやる。
「大丈夫…ではないかな。よく頑張ったのだ。もうついたよ!この茶屋の中にいるから、サイカと合流したらちょっと休もう」
『う、うん!ありがとう…マキ』
息が整ったのを確認し店へ入る。
『…銀髪…いないね…』
店の中を見渡すもサイカの目立つ銀髪はなく、ヒメノはマキへと視線を向けた。
マキは軽くヒメノの頭を撫でてやり、手を掴むとゆっくり歩き出していた。
『マキ?先に座って待つの?』
「ふふっ、今にわかるよ〜……相席いいですか〜ってなんで人が増えてるのだ?」
『え??』
目当ての席につくと、マキは何食わぬ顔で椅子に座り黒髪の男に話しかけていた。
そんなマキに驚き声をあげるも、よく相手の顔をみると…
『…なんでサイカが黒髪に!』
「一々、それくらいで驚かないでよ。めんどくさい…あと客の邪魔になるから早く座りなよ」
目立つ銀髪ではなく黒髪のサイカだった。
サイカの言葉に慌てて椅子に座る。
すると、四人席のあと一つあるサイカの隣からクスクスと笑い声がこぼれていた。
「思っていた神子とは違って面白くて可愛らしい神子様だな。あとサイカが言ってたのとも違う」
「どこがどう可愛らしいのか理解できないよ。お前…目大丈夫?」
「我らが神子様は可愛らしいよ。それにしてもなかなか懐かしいね〜」
深く笠をかぶり顔を隠して笑っていた男の人と親しそうに話す二人を見比べるヒメノに気づき、その男は笠をぬぎ、
「お初にお目にかかります、陰陽の神子様。俺の名前はサクラ。絵描き旅をしている…一応はあなたの守護者です。どうぞよろしくお願いしますね」
桜を連想させるような薄桃色をしたそのサクラという男はにこりと微笑みを浮かべた。
【新たな町にて新たな守護者と出会う。新たな出会い、それがこれからの運命の道をどう照らしていくのやら。今はただ桜を想わせる色をみつめ、もといた世界をおもい、胸に小さき痛み気づかずにいるのであった。】
第六章ー完ー