創作夢ver.長編

□第二章
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【白と黒を宿す麒麟、陰陽の神子、見つけ導く。陰陽の神子、荒れ狂う戦乱の地へ、八つの神を守護せし、守護者とともに、鎮めしため、降り立つ。其の神子の名、高坂 ヒメノ。】




『…ぅ……あれ、私どうして……え!?』


ヒメノは少しふらつきながらも倒れていた自分の身体を起こし、目をゆっくりあけると、さっきまでいたはずの自分の部屋ではなく


『な、なんで!?こんな森の中にいるの!!?』


辺りは木々に囲まれており、こぼれ日がさしこむ美しい光景だが、ヒメノは全く見る余裕もなく慌てながら立ち上がる。


───どうして…だってさっきまでは部屋にいて、本を読んでて…あの本がたしか光り始めて…それで、それから!

『ダメだ。落ち着かないと…あっ!これってまた夢でもみてるんだよ、きっと!なんだ〜そうだよね〜!これで解決っ』

「おい!誰かいんのか」

『え?』


突然の男の声にビクつきながら声の方の草むらに目を向ける。


ガサガサ
「…おいおい、ホントに女がいやがったぜ!」

「だから言っただろ!声がするって!」

「うっひょー!なかなかの別嬪さんだな〜こりゃ高く売り飛ばせそうだ」

───この人たちは何を言っているのだろう。


下品に大笑いしている三人の男たちを訳もわからずにただただ呆然とみつめた。


───売り飛ばすって…言ったよね……は、早く…早く早く早く早く!逃げなくちゃ!


ヒメノは恐怖のあまりガタガタと震え始め今にも腰が抜けそうになるもなんとかこたえ、道もわからぬまま、後ろへ振り返り真っ直ぐ走り始める。


「なっ!?女が逃げたぞ!」

「このッくそ女!!」

「おい!そんなに慌てるな、あっちは…」


ただただ真っ直ぐに後ろを振り返ることもなく全速力で森を走り抜け───あっ!光だ!誰か、誰かいるかもしれない、と藁にもすがる思いであと少しと自分に言い聞かせ木々の終わりからみえる光をめざす。


『はぁはぁ、はっ、っっやった、誰か…っ助け……ぇ…』

「…はぁはぁ…別嬪さん残念だったな〜」

「そっちは崖しかないんだぜ!ぎゃははははははっ」


最後の力を振り絞り着いた先は美しい景色が見える崖。

もう力も入らず座り込んでしまう。

動くことも声をあげる気力さえなくし、今ただ思うのは───早く夢から覚めたい、と切に願うことだけだった。


「おら!さっさと立て!」

『ぃたっ!……え…夢じゃないの?』

「はあ?何わけわかんね〜こと言ってんだあ?夢なわけねぇだろ」

「さっさとしろよ、討伐軍の輩が来ちまうだろ」

『っっいや!離して!離してよ!!』

「チッ!暴れんグハッ!!」

『…え?』

「こら〜!こんな可愛くてか弱い女の子に手を出しちゃうなんて、しかも紐なんかで縛り付けて売りさばこうだなんて…最悪なのだな〜おっさんたち」


───もうダメだ…、と殴られることを覚悟し目をつむっていると聞いた覚えのある声の持ち主がいつの間にやら男たちを倒していた。


「ふぅ…弱い弱い!こんなんじゃこの世は生きぬけないよ〜っと大丈夫でしたか?お迎えが遅くなりすみません。」

『ふぇ?』


助けてくれた声の主はパンパンと手を払いながらヒメノへと近づき、さっきまでのおちゃらけた声とは違い優しく声をかけ手を差し出した。

何も迷わず躊躇うこともなくその手を握り返すと安心からかなんともぬけた反応を返していた。


「ぷっ!…安心してくれたみたいで何よりです。大事になる前でよかったものの怖い思いをさせてすみませ……空気を少しはよんで気絶しててくださいよ〜っとにもう〜」

「こっの…クソガキがっ」

『ヒッ!!?』


一人の男が起き上がりヒメノたちを睨みつける。

ヒメノは恐怖を思い出し、手を強く握りしめていた。

助けた声の主はそんなヒメノを見つめ───ふむふむ、と少し考えたのち


「よいしょっと!」

『きゃっ!!』

「怖いかもですからしっかり僕に捕まっておいてください。そうそう、首にちゃんと捕まっててくださいね〜。」


そういうとヒメノを横抱き───お姫様抱っこ、をしたまま崖へと歩き出す。


「待てや!!」

「嫌だよ。待てって言われて待つ奴もいないと思うし……でも…」

「あ?」


声の主は意地悪そうにニヤリと笑い崖を背に男の方へと振り向き、


「待つことは出来ないが、追いかけてくるのはいいと思う!」

「あ?寝ぼけたこと言ってねぇで女を置いてっ」

「追いかけてこれるもんなら追いかけておいでよ〜それじゃね〜っと!」

「『え?』」


声の主は何の問題もなさそうに崖を飛び降りたのだ。


『…いっっやァァァァァァァァァァァァ!!?!!??!』

「ぅっ!?ちょ、ちょっと落ち着いて!!大丈夫、大丈夫だから、ゆっくり周りをみて落ち着くのだ。」


あまりの声の大きさに声の主は苦笑いしつつ落ち着かせようと少し抱きしめている手に力を入れ、ヒメノは言われるがままにゆっくりと目をあけ周りをみた。


───凄い…まるで飛んでるみたい。……あっ!

『あ、あの…助けていただきありがとうございました!』

「え?お礼なんていいですよ〜。怖い思いはさせてしまいましたしね〜僕の寝坊のせいで…」


ゆっくりふわふわと地上へ降りながら、二人は景色を見ながら話し始める。


『…綺麗な景色……』

「でしょ!ここら辺はまだ争いなんかが少ないし、アレも滅多に現れないですから綺麗なまんまなんですよ…まだ」

『へー!そうなんですね…ん?争い?アレ??それに!なんで浮いてるんですか!!?私たち!』

聞きなれない言葉にヒメノは不思議そうに首を傾げ唸っていると、今自分が置かれている状況を思い出し相手につめよる。


「えっと、少し落ち着いてくださいね〜。うーん、軽く説明しますと〜…僕の名は【マキ】といいます。貴女の守護者の一人です。何故飛んで…いや、浮いているのかというと僕は【風を守護に持つ白虎の守護者】だからで、今は風を操っているからです。争いとはここの世はまさに戦乱の世だからです。以上!…ご理解いただけましたか?陰陽の神子【高坂 ヒメノ】様」

『……なんで私の名前……それに…神子って……』

───あの夢でも…たしか私を神子って…でもこれも……

「残念ながら、夢ではなく現実で起きている事ですよ。」

『…夢…じゃ、ない……』

「あれ?…あらら〜」


ヒメノはマキの言葉をなんとか理解しようとするも全く頭が回らず、恐怖や未知の体験からの疲れとマキがいる安心から気がぬけ始め、どんどん瞼が重くなり…


「そりゃ、怖いことや意味不なこと続きで疲れていますよね。…もう大丈夫。今はゆっくりおやすみなさい。」

───まるで…あの夢の…最後と、おなじ……


ヒメノはあの夢で助けてくれた不思議な紋様を持つ人物と重ね合わせながら深い深い夢の中へ落ちていった。






【陰陽の神子、人里離れた山の奥にて野党に襲われるも、此れを守護者の一人、風を守護に持つ白虎の守護者、マキ、窮地から救い出す、夢深くに落ちる神子を見つめ、マキ、瞳に悲しみの色浮かべ、何かを秘めながら今は全ての母である太一君の元へ急ぐ】






第二章ー完ー

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