創作夢ver.長編

□序章
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真っ暗闇の中、その少女、ヒメノはただただポツンとその闇の中に浮かんでいた。


───あぁ…またこの夢…


ヒメノは諦めているような表情を浮かべるも次第に恐怖からくる苦しみの表情へと顔を歪めていた。

真っ暗闇の中、自身を護るように怯えながら身体を強く抱きしめ、


───これは夢、これは夢、これは…夢…


早く目覚めたいと強く念じるかのように何度も何度も繰り返していると、どこからか声が聞こえ始める。

最初は本当にとても小さな声。だが、次第に声は大きくなり何人にも重なり合い始め自分へと近づいてくる。


【…タ…スケ…テ……】
【…ヒトリニシナイデ】
【シニタクナイ】
【タスケテ】


身体をガタガタと震わせながら───早く終われ!夢から覚めろ!と力強く自身を抱きしめ、ぎゅっと目をつむる。



それから、どれくらい時間がたっただろう。



また最初のように静まり返り、ただただ真っ暗闇だけが残っていた。

ヒメノはゆっくり目をあけ、真っ暗闇で何も見えないのはわかっていたが、安心を得たくて辺りを見渡した。


───よかった…これでいつもみたいにやっと目が覚める。


恐怖からの解放に安堵の表情を浮かべた。


【ダズゲデーーーーー】

『ひッ!!!?』


突然の雄叫びにも似た叫び声と首を強く締め付けている黒い靄のようなものがヒメノを今度は死への恐怖へと叩き落とす。


───もう、苦しい、、誰か、

【ー様!み、様!…神子様!】


足掻いていた手は次第に力を失い始めた時、今まで聞こえていたうめき声や叫び声とは違い、真っ直ぐヒメノだけに届き優しく包むような安心できる声が響いた。


───だ、だれ?…だれ、を、よんで、るの?……えっ


途絶えそうなほど弱々しく途切れ途切れな意識をなんとか保っていると、後ろから優しい温もりがヒメノを包んでいた。


【気づくのが遅くなり、すみません。今、貴女を助けます。…もう大丈夫なのだ】

───だれ?


後ろを振り向くことすら出来ず、ただただ声の主に身体を預けていた。

その声の主は身体を預けてくれるヒメノを少し強く抱きしめる。


【我を守護せし自由な風よ。この者たちに安らかなる眠りを。】


そう言うと温かな風が辺りを包み、いつの間にか自分の首に巻きついていた黒い靄もおぞましい声たちもいなくなっていた。

ヒメノは安心と解放感からか一気に眠気が襲い、───お礼を言わないと、と後ろを振り返るも間に合わず、目にしたものは自分を助けようとして負ったと思われる傷たちと鎖骨にみえた変わった【紋様】だけだった。



そして、そのまま現実へと眠りに落ちてしまった。




【陰と陽の神子……また新しい争いが始まるのかな………】



左の鎖骨に浮かびあがった特別な紋様を優しく撫でながら、その少女は悲しそうな表情を浮かべ、ぽつりとつぶやき、風に包まれて消えた。




序章ー完ー

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