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□何度でも君と 9
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『ほら、眼鏡はずさなきゃ…顔みせて』 

何度も何度も言われる声が耳に残って離れない。 

『だ…め……』 




『お前の顔みてると殺したくなるのよ! 
 男好きな顔して!! 
 ホントにあんたはあの女そっくり!』 

継母さん? 



『じゃあ外してあげようね…』 

手が伸びてくる… 
振り払う力も残って…ない。 


『嫌っ…』 

パシャッッ 

フラッシュがチカチカと目に入る。 

『へぇ…意外だね。綺麗じゃない。もっと綺麗してあげる…ねっ』 

きれい…きれいに… 
いや…でも 
もう…どう……いい。 

天井が見える… 
うちの天井じゃない 

『いい子だね…』 

いい子だね… 
声が… 
谷山さん? 

熱出たとき谷山さん…いい子だねって… 
言ってくれて… 

頭撫でて… 

谷山さん? 

口に触れてくるモノが何だか、気持ち悪い。 
息をしたくても、出来ない。 

なんで…? 

『いい子にしてたら大丈夫だよ』 

……!? 
ちがう… 
だれ…? 


『いやぁぁぁぁーー』 

『いてっっ!』 

ガシッッ 


『…ッッ…』 

殴られた頬の痛みに頭が冴える。 

『てめぇ…ふざけんなよ!』 

鈍い音と共に頬が焼けつくように痛い。 

痛みで訳がわからない。 

『いや、いやぁぁぁ!!』 

足をばたつかせてもびくともしない。 

『口塞げや。』 

口に押し込まれるものが声を塞いで、どんなに空気も求めても、入ってこない。 
苦しい。 
誰か…… 

『せっかく良くしてやろーって思ったのに、じゃしゃーねぇな…おい』 

またフラッシュの光が何度も白く視界を奪う。 
嫌だっっ。 

『うっっ…ぁ…』 

腹部に入った膝に呼吸が出来なくて、意識が持っていかれそう。 
熱い… 

目の前をシャツのボタンが吹き飛んでいく… 
それでもなんとか押し退けようと暴れるけど、全然動かない。 

冷たい塊が首筋を伝う。 

『いい加減にしろや…』 

喉元に全神経が集中する。 

『うぅ…ッッ』 

硬い金属が身をこわばらせ、プツンと皮膚が切れる音がする。 
胸元までに伝う温かさ…… 

『大人しくしときゃ、いいものを…殺すよ?』 

ナイフが体中を滑る度にピリピリと痛む。 

『いいねぇ。マニア決定だなぁ…人気でるよこれ、ほれっ綺麗に撮ってもらいな?』 

…!? 
ビデオッッ!! 

『ぐぅほッッごほッッ…』 

『だから動くなっての』 

もう一度入った膝が腹部にのったまま動かなくて息ができない。 

『学習しないなぁ。おい!足押さえてろ』 

『ふっ…ぐ…』 

小さく息をしてる間も口から胃液が洩れる。 

『動くなよ…動くと、ここ切れちゃうよ?』 

クックッと喉の奥で笑う声が耳障りだ。 

目の前に艶かしい注射器の針先が突きつけられた途端、恐怖で固まり、動くことはもうできない。 

『これで楽になっとけ』 
誰かッッ 
助けて…… 

ガシャーーンガシャッッ 
弾けるような音が響く 

『中島さんッッ大変ですッ!キメた客が上で暴れて…警察が来はじめて…』 

『てめッ何やってンだよッ!殺すぞ!』 

室内の客は慌て始める。 
それを押し退けるように中島が私の上からたちあがり扉を出ていく。 

足をつかんでた男も周りの仲間を集めて、後をおう。 

自由にならない体をなんとか起き上がらせて周りを見渡す。 

でないと…はやくでないと… 


慌てて逃げ出した、人混みに紛れて上に上がろうとすると、暴れた数人を取り押さえる店員と、慌てて逃げ出していく客、それを押さえる警察官が入り交じる形になっていた。  

警官の後ろを紛れて外に出るとその周辺から離れるように必死で走る。 

はやく逃げないと… 

どんどん走っても何かが追いかけてくるようで、逃げるという言葉だけがわたしの足を動かす、でも何の為に? 

自分の格好をもう一度見てみる。 
裸足の脚は血がにじんでボロボロで、破れたスカートからは内出血があちこちとある足が見える、ぼろ布を纏っただけの上半身は、暴行されたとしか考えられない。 

誰も待ってもいない部屋に、そんなに必死で、何逃げてるのだろう。 

もう…いいっか 

立ち止まった私はもう歩くことも出来ず、ゴミ置き場の扉にズルズルと持たれて座り込んだ。 
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