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□何度でも君と 8
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side kishow
久しぶりに事務所に来てみると、マネージャーが1ヶ月分のスケジュールと、ダンボール箱を持って来た。
『紀章くん久々だねぇーファンレター届いてるよぉ。それとこれマモくんとこの事務所からぁ』
『ん〜そこおいといて〜』
スケジュールはありがたいことにいっぱいで、暫くは声優の仕事のが忙しそう…
『あー台本来てる??』
『はいはーい、あとで持ってくるよぉ』
ほーいって言ってマもちゃんから送られてた大きめな茶封筒をあけるとCDが入ってる、この前メールでアルバム出来たって言ってたし。
メモにはちゃんとメッセージが入ってて『良いものできましたぁー。特に6曲目聴いてくださいねぇ。衝撃の出来!!聴いてからのお楽しみ〜感想待ってまーーす☆ 愛するマモ−リッシュより』とふざけたメッセージ。
『んーとCD聴けるぅ??』
『あ、あれ使ってください』
古いラジカセ的なものを指されたんでとりあえず入れる。
電源…
んで6曲目?
これはっとアルバムの裏の曲名を見ると、前入ってたやつ。
なんで衝撃なん?
original version…ふーん
ピアノのゆったりしたメロディーが流れる、それから激しいタッチで曲が進む。
ん?
ピアノっことは、これって…!?
もしかして。
慌てて、アルバムの歌詞のところを見るとピアノ編曲 桐生紫 あぁね。
でもいいね。
マモちゃんどんだけ気に入ったの?
確かに気持ち良かったしね…
ちょっときーやんふまーーん…
俺が拾ってきたのになぁ、あいつ。
携帯を開いて電話をかける。
プル−プル−プル−
『お疲れ様ーーす、へへっかけてくると思いましたぁ』
『なにあれーー?なに楽しそうなことやっちゃってんのぉ?』
ちょっと不満げに言う。
『だって紀章さんだけ、あん時盛り上がっちゃってー僕ちょっと不完全燃焼だったし??僕のファンなのに〜ってね、でも良かったでしょ?』
『うん良かった、ちょっと羨ましかったっっつてねッッ』
正直ね。
『今、結構一緒仕事してるんすよ!でもうちのスポンサーやら、なんかあのときから、仕事まわしちゃったみたいで、今あんまりオファーできないっすけど…』
なにそれー。
知らないし…そういうとこ自由にオファー出来るのってちょっといいなぁ。
『そっかぁ、まぁ、俺音楽スタッフはもういるしなぁ、てかあれから会ってないし…あいつ携帯もってねぇし』
『あっ今持ってますよ…スマホ』
『うそー、しんねぇーしッッかけてこいって。』
『てか紀章さんの知らなんじゃないっすか?』
あっそーね。
『この前しもんぬに使い方聞いてましたしね…』
『しもんぬまで…』
ちょい面白くないね…
そんな話をしながら、今度ちょっとあいつとしもんぬ、苛めるの決定!
なんて思いながら、電話を切った。
夕飯どーしよっなぁ。
牛丼?
最近牛肉重いし、飲みたいなぁ。
ビール?
気分じゃないな…
ワインかなぁ。
じゃあ、あそこのバルがいいかなぁ。
ちょっと遠いけど、その気分!
ネオン街から少し離れた裏路地、生ハムがうまい店がある。
そうと決めてしまうと、何がなんでも食べたくなる。
早くたべたいなぁ…店開いてるだろーなぁ。
口がもう生ハムに…
ん?
紫…?
なんでこんな繁華街にいんだよ。
しかも男と!?
なんか柄わりーし。
3人の男に連れだって歩く紫が、薄暗い店にはいっていく。
全くあいつにそぐわない場所。
ついつい後ろをつけていくと、会員制とだけ札のある店に入っていく…
こんなとこなんかやべーし。
入り口にはちょっと危なそうな男が立っている。
後ろ姿を見送って、入り口前で立ち止まったままずっと考えていた。