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□何度でも君と
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side kishow
マモちゃんのライブ
いつぶりだろーな。
いっつも来てくださいって言われてるんだけど、なかなかタイミング合わなくて、やっと来れた。
先月は俺のライブ来てくれたから、行かなきゃなって思ってたところで、仕事が急にキャンセルになったから、急遽ここにこれたんだけど。
一緒に行ってくれるヤツ探せなくて、結局一人。
来なきゃいけないって言ったけど、マモちゃんのライブ見ると、正直、自分も頑張らなきゃって、感化される。
だってすげー興奮するし、俺のライブのファンとはちょっと種類は違うけど、マジでなんか、いいなって思う、負けれねーなとも。
マモちゃんから貰ったチケット見たら、前の方だし、はやくから行かないと熱烈ファンに巻き込まれそうだし!?
裏からまわれるのかいねぇ??
とりま、裏口。
ここ前に俺も使ったことある多分あってる。
マモちゃんに電話してみよっかな。
プル〜プル〜プル〜プル〜
『はいはーい、あっ紀章さん??』
聞きなれた声に少し安心。
『マモちゃん??お疲れ〜本番前にごめんね。今日さぁ、きちゃったんだけどさぁ。どしたらいい?』
『マジで来てくれたんっすかぁ?嬉しーなぁ。じゃあ、じゃあ、裏のスタッフに知り合い来てくれそうな人言ってるからそっちいいっすか?』
ライブ前で少しhighテンションなマモくん、分かる分かるうんうん…
『あっ、マジで?良かったぁ、ファンいっぱい居るから入りにくいなぁって思ってさぁ。』
『でしょー?すんませーん』
『わかったぁ。んじゃあ後でねーー楽しみにしてっからねー』
『はーい!そんじゃぁ終わったら打ち上げお願いしまーす、』
うん。
ひと安心。
電話を切ってからスタッフを探すと、あっいたいた。
すんなり入れて会場へ案内してくれる。
まだざわついてる会場ーーーーーー。
うーん、いい感じ。
緊張と興奮と、このソワソワ感。
みんなが、落ち着きなく動きまわる。
俺もちょっと緊張。
数十分。
席もほぼ埋まり、すごい圧迫感の館内。
オープニングの説明がながれはじめても俺の右隣は埋まらない。
てかだいたい時間10分前にはくるっしょ?
この時間に来ねぇーってことは、隣はないな。
多分ここは関係者席だし、広く使えるな。
とか考えながら席に置いてあるパンフに目を通す。
マモくん何唄うかなー。
オルフェ歌ってくんねーかな。
アドレナリン出て熱唱しちゃうかも!?
ステージあがっちゃうよーーー!?
俺!
待ち長いこの時間をフワフワ、オラオラしながら待ってると、やっと一気に照明が落ちる。
待ちに待ったとばかりに、熱風とともに歓声。
観客の視線がステージに向かって釘付けになる瞬間が、見なくても背中で感じる。
口の中の唾液が一瞬で引いていく感じ。
バーンとスクリーンに映像。
マモくんライブって多彩なんだよねぇ。
映画ばりに映像使ってくんなぁ。
マモくんが出てきた!
うぉーーー。
ってちょっと俺も歓声。
ダンスも完璧、心配なく楽しめるこの安心感。
なんかマジ歌いたくなる!
二曲連続で歌って、踊って、盛り上がって…
心臓から熱い血液が頭にぶぁーっと登っていって、体温が上昇していくのが分かる。
いいねぇいいねぇ。
やっぱカッコいいよ。
この嫌みのない爽やかさ、んでちょっと肌露出。
盛り上がっていきま…
いい気分でノッてきた頃に頭を下げながらそそくさと前を通る女が一人。
俺の右隣に到着。
ちょっと広く隣の席まで使ってた俺。
少し会釈をして、自分の席に一歩ずれる。
ちらっと確認。
まぁ、中の中…
今時珍しい黒髪を一つに結んで、赤い縁の眼鏡をかけて、白っぽい、ブラウスにパンツ。
活発でもなく、お嬢様風でもなく、多分教室にいたら、同窓会で思い出されないタイプ?
なんとなし、向こうも俺を確認。
んでもう一度会釈。
恐らく俺を知らないだろう女は二度見。
はいはい、怖いですね。
目付きもね、良くないですね。
知ってますよ…
ちょっとヤンキーですしね。
所在なさげに、荷物を席において、マモちゃんのいるステージを見る女。
まぁ、今はマモちゃん楽しも。
んで、また次回のライブの活力にしないと来た意味ないし!?
そんなこんなで、どんどん進むライブ。
まもちゃんの歌声の、迫力に会場のボルテージは最高潮で、俺も頭がふぁーっと酸欠。
なんかマジ歌いたくなってきた、つーか叫びたい。
今ライブしたら気持ちいいだろーな。
ちょっとパンチドランカーみたく、フワフワしながら、左確認。
女同士ワイワイ、エイエイ。
多分誰かに頼んだらしいチケットで熱狂的なファンって感じ。
右確認。
……。
……。
直立不動。
……。
真顔。
じとーーって音がなるくらいマモちゃんの事見てる。
ライブよっっ?
マモちゃん熱唱してんだぞ?
こわっっっ!
冷めるわぁ。
盛り上がれよっっ!
俺のライブは来んな、絶対。
そんな中、聞き覚えのあるイントロ。
勢いのある歓声で、すぐ分かった。
オルフェだ。
回りも腕ブンブン、頭もガンガン振りながら、かなり叫ぶ!
イントロが終わってマモちゃんの突き抜ける声が心臓にズドンと響く。
ついつい俺も軽くジャンプしながら口づさんで満喫。
もうすぐサビ。
限りない……
『キャッッ』
!?
バキッ……
『バキッって』
右足の足の裏になんか違和感。
なんか踏んでる。
いやーな予感。
恐る恐る見ると、這いつくばる人影。
さっきまで、横にいたはずの女が、俺のブーツにすがりつくように、座り込んでる。
『あの……』
その間もガンガン曲は進んでるし、回りの音で全然その女の行動は読み取れないし、暗くて足元が見えない。
暫く二人でお互いの行動を理解できずに、凝視してたら、向こうの女が、右手でライブを指差した。
俺も取り合えず、もうオルフェ終わるけど、アンコールもあるし、見たいしで、ちょっと小さく頷いてマモちゃんに、視線を戻す。
せっかく盛り上った気分も微妙に急降下で、歌は楽しめたけど、面倒な事もあるし、話しないといけないと思うと、気になって集中できない。
こう見えて、人見知りだし、あーゆうタイプは正直苦手。
どーにも接し方に困る。
んなこと考えたりして、それなりに見ながら、楽しんでると、色々考えていたせいかあっという間に終わってしまった、あっマモちゃんと目あった!
頷きながらちょっとウィンク。
キャーーーって、気のせい?
最後までファンサービスを忘れないマモちゃんを見守りながら、後で合ったら、どんな感想言おうかななんて想像して、ちょっと余韻にひたっる。
周りのファンが帰っていくのを、ちらっと見ると、左隣の女二人組が、前を通りすぎた。
『いやーーんマモ君超イケけてたよねぇ!』
『マジかっこよかったぁーー!最後ウィンクしてくれたし』
うぁーーー
『そうそう、目があったぁ!!!』
俺もぉーーみたいな。
『私もぉーー!今日パパにチケット頼んでよかったぁ』
って俺にウィンクしてくれたんだし。
なんて俺バカ??
そんな熱狂ファンがズカズカ通りすぎていく。
ほんとズカズカと。
ダンッッ
『あっすいません』
あっ右隣の女。
ぶつかってペコペコしながら荷物まとめて出入り口に出て行ってる。
冴えないかんじで、回りキョロキョロしながら。
まっいいか。
話せずに済んで、ほっとしながら俺も帰り支度。
そーいえば足元でパキパキ音してたけど、なんか踏んでる。
足元見てみると、粉々の破片。
『ん??なんだこれ?』
形はなんとなし残ってて、赤いプラスチック、わっかになってるし、粉々の硝子の欠片たち。
眼鏡!?