LUCE

□世界大会
2ページ/4ページ




「全く…」


フゥッと溜息をつく。
叔父バカも程々にして欲しい。
もう一度鏡を見ると、不機嫌そうな自分の顔があった。




その時。
コンコンッとドアをノックする音が聞こえた。



「ライトさん。リハーサルの時間なので来てください」


「はぁーい」



咄嗟にサングラスをかけて、叔父さんを見る。



「んじゃ、リハに行ってくるね」

「おー」



雑誌を読みながら返事だけしたマスター。
世界大会なのになんだこの抜け感。
そのまま部屋を出て、待っていたスタッフの人について行った。













ステージの上でダイナミックにポーズをとる黒人のダンサー。
私は観客席から、自分の順番を待っている。
私の番まで後3人。
正直ちょっとヒマだったりする。



「お前、若いな」



前に座ってたニューエラを被った白人の男の人が話しかけてきた。



「それは褒め言葉?」

「ははっ!そりゃあ、褒め言葉だろ。
そんな若くて世界大会に出るんだからな。」

「そう」



黒人の人のリハが終わった。
後2人。




「俺、お前のこと知ってるぜ」



ニヤリと笑う男。
怪しい奴。



「私はあなたの事知らない」

「そうか!じゃあ自己紹介しねぇとな!」



おれはニックだ。と手を出してきた。



「ライトよ」



そう言って手を握る。



「あぁ、知ってる」

「なんで知ってるの?」

「なんでって。お前結構有名だからな」

「でも、アメリカでは活動してないわよ」

「あぁ。でも動画で見た」

「動画?」



そう言うと、ニックはポケットからケータイを取り出した。



「ほら見てみろよ」



そう言って差し出されたケータイ
には、動画サイトが開いていてあった。



「これ、私だ。」



そこには、私が写っていて。
ライブハウスの時のやつかな?
ていうか、こんなのを撮られてサイトに上げられてたなんて…



「この動画を見たんだ。
それで、ライトに興味を持った。」

「他にもこんな動画が?」

「いや、これだけだ。
しかもUPしたら直ぐに消えるからな。レアだ。」



ニックはニヤッと笑って、ケータイをなおした。



「俺はライトのダンスを見てこの道に進んだ。憧れと言ってもいいぐらい。」

「それはありがとう」



キラキラした目で私を見つめるニック。
いや、なんかやりずらいな。



「今日の大会。必ず来ると思ってた。
お前、優勝候補なんだとさ」



おっと、それは初耳。



「そうなの?」

「あぁ。でもそうはさせない。
優勝するのは俺だ。
ライトに勝つことが俺の夢だからな」

「宣戦布告ってわけね」



ニックはニヤッと笑うと立ち上がった。



「俺の番だな。見てろよ、ライト」



そう言ってステージに向かうニック。
私に憧れてこの世界に入ったなんて、なんか照れるな。
そんな風に思っていると、音楽が始まった。


ニックが踊り始める。
まぁ、なんていうか…うまい。
先程までのダンサーとは違う感じ。
キレも速さも群を抜いてる。




…………でも、



「どうだった?俺のダンス」



リハの踊り終わったニックがこちらに来た。
自信ありげに言うニック。



「そうね。とても上手だった。でも…」



ライトさん、スタンバイお願いします。とスタッフが呼んでいるのが聞こえた。


「でも、私の方が上ね」



そう言って私はステージの上に立った。
観客席で見ているニック。
見てなさい。私のダンスを……


音楽が始まったーーー
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ